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ちょっと今動くのは色々と不味そうですね。
視界が効かないので現在位置が把握出来ないです。コンパスなんて持ってないですし、太陽も見えないので方角も判らないです。
ランドマークになる西の断崖も、霧の彼方に沈んで全く見えません。勿論盆地の底に下りたので森や湖等見えやしません。
気温も一気に下がって来ました。
湿原はぼんやりと起伏が有り、迷路のようにウネウネと道らしき物が有ります。
ただ突然行き止まりになる事も有りますし、このままの土砂降りが続けばこの細い道も冠水してにっちもさっちも行かなくなるかも知れないです。
ところで、にっちもさっちもって何ですかね?何となく意味は判るんですけど何が語源なんでしょうか。
ま、それは置いておいて、このまま雨ざらしはさすがに体温を持って行かれそうです。
周囲に雨宿り出来そうな地形は無し。
おまけに斜面を下りて少し進んでしまい、湿地をうろついていたので来た道も不明・・・
だいぶ不味い状況です。
天候が回復するまでタープでシェルターを張ってビバークするしか有りません。
しかし斜面の底というのが不気味ですね。少しでも標高の高い所でビバークし、常に水嵩を監視しましょう。
なるべく水辺から遠ざかり、シェルターが張れそうな場所を探して歩き回ります。
雨脚は弱まる気配を見せず、轟々と滝のような水音を響かせ、地面を穿つように降りそぼっています。
視界は10mも効かず、嫌が上にも不安を煽って来ます。
それでも、しばらく歩くと前方に岩のような大きな影が現れました。
それは巨大な生物の死体です。
体の左側を下にしてこちらに背を向けて倒れていますね。尻の部分から右脇に掛けて大きく抉れているので、明らかに何かに捕食されたのでしょう。
内蔵だけ食い散らかされて後はほって置かれたようです。
茶色と白のまだら模様、長毛の毛皮に覆われ、太い足は偶蹄目の四つ足。
頭部から首にかけて特徴的な鰓のようなフリルがあり、水牛のような角は左右に一本づつ大きく張り出しています。鼻の根元からもサイのように一本生えているので、全部で三本の角です。
巨大な三本角と兜のようなフリルはあれですね。トリケラトプスにそっくりです。
まるでジャージー牛とトリケラトプスを足したような動物です。
大きさは体長7~8mというところでしょうか。体高はおそらく3~4m。でかいです・・・
口から紫色に変色した舌が垂れています。試しに唇をめくって歯を見ましたが、犬歯は無く、綺麗な草食動物の歯です。
良かった、これが肉食でこの辺にウヨウヨ居たら泣きそうになります。
ぐるりと周りを一周すると、腹部に乳牛のように大きな乳房が有りました。ホントに牛そっくり。
スケールは違いますが・・・
そしてその乳房が内側から蠢いています。
物凄く嫌な予感・・・