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軽く、掬い上げるように地面すれすれからバスタードソードを振り上げ、剣先が紅帽子Aの喉元まで来た時に軌道を変えて突き込みます。
手首のスナップを効かせて押し込み、しかし肘は伸ばし切りません。踏み込むけど踏み込み過ぎません。
充分な手応えを感じましたが、視線は次の標的紅帽子Cへ。
短剣紅帽子が僕の背後に回り込もうとしています。
でも今は無視。
紅帽子Bからのスリングショットが飛んで来ますが、盾を掲げて弾き飛ばします。
スリングショットとは紐の中程に石等を挟み込み、紐を振り回して遠心力で弾を飛ばす道具です。
たかが石と馬鹿に出来ません。
イタリアはフィレンツェのアカデミア美術館に収蔵されている有名なダビデ像が、このスリングショットと共に彫刻されています。
ダビデが左肩に掛けている布切れがスリングショットですね。
けしてダビデが近所の銭湯に行った帰りの様子ではありません。
ダビデは、このスリングショットで巨人ゴライアスを倒しているのです。急所に当たれば痛いでは済まないのがスリングショット。
でも、手の内は読めています。
ネイの作ってくれたこの狩人鎧を打ち抜くのは不可能。首から上の被弾さえ気を付けていれば恐るるに足らず!
紅帽子Cはスリングショットを捨て、腰から小さなナイフを抜き放っています。
リーチは正義!
まるでチンピラヤクザのように、懐に飛び込んで来ようとする紅帽子Cを盾で防御、すかさずバスタードソードを振り上げ・・・
後の短剣紅帽子に振り下ろします!
見え見えのフェイント。
そんなものに引っかかりませんよ!
相変わらずの謎切れ味で短剣紅帽子を文字通り一刀両断!そのままバスタードソードの軌道を滑らかに変えて紅帽子Cの首を切断!
残心すること無く剣をそのまま地面に突き刺し、銃をもう一度抜きました。
怯えて撤退しようとする紅帽子Bの背に最後の一発。ライトレイで止め。
追い払うだけでも良かったのですが、さらに仲間を引き連れて復讐に来られたら堪りません。
心を鬼にして全滅させました。
すぐさま銃の魔石マガジンを入れ替え、シェルターに戻って追加装甲を纏い、狩人鎧スタイルから騎兵鎧スタイルに武装を変更します。
さらにいつでも出立出来るように荷物をまとめ、戦場を検分する事にしました。
アラームのラインを一周していると、ミスリルワイアーに一部血が付いています。どうやらあの吹き矢持ちの血のようです。
彼は隠れて狙撃しようとしていたのでは無く、足の裂傷を庇いながら蹲って攻撃していたのでした。
今回の戦闘の反省点。
ヘッドライトの明かりは拡散ライトでは無くサーチ用のビームライトがいいですね。敵を探すのに、どうしても遠くを見たいのです。
でもそうすると視界の端の方が見えなくなります。広域を照らす拡散ライトも無いといけません。
でも二種の明かりは戦闘中無理です。
あ、そうだ。
戦闘中盾を前に構えています。その盾に仕込めばいいんじゃないですか?
後で改造しましょう!幸い予備の魔晶石と魔石は持って来ています。盾の上部にでも取り付けましょう。
それからもう一つ反省点。
やっぱりヘルメット要るかな?飛び道具を使う相手が出て来たと言う事は、死角から頭部を狙撃される可能性があると言う事です。
試しに紅帽子の吹き矢の矢を鎧のメッシュにそっと押し当て、徐々に力を加えて行きます。
最終的に力一杯押し当てても、メッシュを抜く事は出来ませんでした。
ひとまず安心ですが、メッシュに覆われていない部分も勿論有ります。トンボ革は多分矢は弾けないでしょうしね。
帰ってからミスリルメッシュで特殊部隊みたいな目出し帽でも作ろっかな・・・