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先程の反省から、敵全体を常に把握出来る位置取りを意識します。
それに敵が見えているだけとは限らない事も同時に意識しなければ・・・
そんな事、はっきり言って素人の僕に出来る訳が有りません。
でも諦たらそこで試合終了、僕の場合は試合どころか人生が終了してしまいます。ネイの為にもそれは出来ない相談です。
とにかく冷静に。
無理。
落ち着いて。
無理。
慌てないように。
無理。
無理でもやるっ!!
葛藤しつつ紅帽子を相手取ります。
そんなに強敵ではない筈です。一番怖い吹き矢は沈めました。
囲もうとする残り四匹を牽制して全員視界の中に収めています。
それにしても、紅帽子は頭が良いです。
僕が銃を向けると射線から身を避けます。この短時間でこの武器の特性をつかむとは!
伊達に飛び道具を使うだけ有りますね。
そこである法則を思い出しました。
リーチがある武器を好む者はインファイトが苦手の法則。
僕もそう。
狙撃手もそう。
ラノベの魔法使いもそう。
ただしチート主人公はオールラウンドプレイヤーなので除外です。
こうなったら突っ込んでって斬りまくりましょう!全滅が僕の目的ではありません。蹴散らして追い返せればそれでいいのです。
どの道銃で狙っても目標が小さいし、ちょこまか動くので当たりません。残弾も一発だし。
残りの四匹の内刃物装備の前衛は一匹、残りの三匹はスリングショットを持っています。
先ずはうるさい前衛を黙らせましょう!
前衛の紅帽子の得物は短剣。陰険そうな顔してますし、吹き矢を使う種族ですから刃には毒が塗ってある可能性大です。
陰険だから毒を使うとは限らないのですが・・・しかも陰険そうなだけで陰険と決まった訳でもないのですが、問題は吹き矢を使う種族ということです。
吹き矢はそれ自体の攻撃力というのは微々たるものです。余程の肺活量が無限り大きな矢は飛ばせません。
そして紅帽子は小柄、肺活量も知れた物でしょう。
それでも獲物を狩るには、矢に麻痺毒や致死毒を塗るしかありません。吹き矢は毒が前提の武器なんです。
その毒を短剣の刃に塗ってない訳がありません。
一応ネイに持たされた薬の中に解毒系の薬はありますが、毒の種類によっては効く効かないがあるでしょう。
受傷しないのが一番良いですね。毒怖いです。
前衛短剣持ちの紅帽子が砲弾みたいに飛び込んで来ました!
足元の盾の湾曲を利用して爪先で跳ねあげ相手の目を眩し、向かって右に回り込みます。
凄い反射神経!
直前で盾を躱して大きく左に逸れます。あっという間に距離を取られました。
でも相手の武器は接近戦用の短剣、ほっておいても向こうから僕の間合いに入ってくれます。
銃をホルスターに戻し、もう一度盾を跳ね上げて空中でキャッチした僕は、スリングショットを警戒します。
左手に盾、右手に剣の憧れのソードマンスタイルです。
僕はわざと短剣紅帽子を無視し、後衛のスリングショット持ちに迫りました。
これは誘いです。
乗って来ても乗って来なくてもどちらでも構いません。誘いに乗ってきたら短剣持ちを、乗って来なかったらスリングショットAをそのまま攻撃するだけです!
重心を低く大振りにならないように気を付け、バスタードソードを刻むように振るいます。
今まで僕にとって剣とは ”斬る事も出来る棍棒” でした。
それが全く通用しなかったのがあの王様半魚人戦でした。
ただ叩きつけるだけの単調な剣筋では、格上に傷一つ付ける事は出来ません。僕が勝てたのは、ひとえにトリッキーな攻撃方法とネイの参戦のお陰です。
バスタードソードは西洋剣では比較的斬る事が得意な剣種です。突きと斬撃の両方に優れる故に混血とも呼ばれているのです。
それを生かさない手は有りません。
しかも両手剣より軽く、片手剣よりもリーチが有り攻撃力が高い!
性能の優れた道具は、そのスペックの高さ故扱いが難しいのは当たり前の事です。
ですが練習しましたよ!
この剣が手の延長に感じられるまで!
嘘です。そこまでは行ってません。
でも手の血豆が潰れても練習したのは事実です!
練習の成果を見せてやりましょう!!