126
鰭脚類人たちに別れを告げ、巨人洞窟を辞します。
何故かご隠居様だけ気難しいお顔をされてましたけど、他の皆さんは笑顔で見送ってくれました。
今回この距離で、この期間なら何とかなりましたけど、やはり弓兵鎧は重過ぎるようです。拠点防衛戦向けの鎧ですね。
帰りの道すがら、ネイと身振り片言で相談し、鎧を改良する事にしました。一度で完璧というのは無いですもんね。
ついでにネイの遠距離攻撃用新装備の事も何とか伝え、必死の説得で許可をもぎ取りました!
でもまあ、それはそれとして日常の生活も大事です。
保存していたお肉やお魚、乾燥野菜も無くなりかけていますし、岩塩もそろそろ補充したほうが良さそうです。
完全に雪が融けて地面が乾くまでは、大人しく実験と狩り採集に精を出しましょう。
相変わらずやる事は山積みですしね。
日々の食糧調達は言うに及ばず、生け簀罠の改修、森の見回り、雪と氷で破損した橋の修復、ゴブさんたち魔物、害獣の駆除、雪で傷んだおうちの外壁や屋根の修理。光の魔晶石の設置と配線工事、シャンデリア作りにランプシェード作り・・・
ネイはネイで機織、毛糸編み、家庭菜園の手入れ、僕の新しい鎧の共同制作、自分のスケールメイルの手直し、家事全般とお互い休む間もありません。
そして魔晶石の実験!
実は僕はこれが一番楽しいです!
以下、僕の実験内容の一例です。
謎の暴発現象の考察。
ミスリルの狭い空間に魔晶石を入れ、魔力を通すと魔晶石の属性魔法がパワーアップして噴出する謎性質を検証です。
火の魔晶石でまとめてみますと、こうなります。
圧力を伴った炎が火炎放射の如く噴出、または炎の塊となって高速で飛翔するのが判りました。飛翔した炎は着弾すると、小規模の爆発を起こします。
暴発が起こるのは狭い筒状、しかも片方が閉じられた状態の物で、筒の材質は硬化ミスリルに限られます。
筒の内径が小さければ小さい程出力が上がるが、小さすぎると魔晶石が破損します。
尚、完全に密閉してしまうと、圧力限界が来たところで大きな爆発を起こすetc.etc.
この謎現象についての考察ですが、ミスリルの特性と関係があるのではないかと思います。
硬化したミスリルは魔力に対して絶縁体となります。これで魔力を通した魔晶石をくるむと、放射状に漏れていた魔力が一つの方向に集中する為、或いは内部で魔力の乱反射が起き、エネルギーが増幅するのではないでしょうか。
推測の域を出ませんが・・・
ミスリルでくるんで増幅するのは魔石の方か、魔晶石の方か、あるいは両方くるまないと駄目なのか等はサンプルが少ないので、実用の方を重視せざるを得ず、惜しいかな進んでおりません。
いずれ先生の生態や性質、利用方法共々、研究を続けて行きたいと思います。
火炎放射と炎の塊の違いは筒の長さ。長ければブレスのように火炎を噴射し、短ければ炎の塊となる。中間の長さだとどっちつかずとなり、かえって威力は減退する。尚、長すぎても短すぎても威力は減退する。
威力が上がれば上がる程魔石の魔力消費が上がる。
しかし、全体の出力としては鰭脚類人の魔法や、両生類人のブレスにはやはり及びません。
・・・一つなら・・・
そう、魔晶石一つなら出力は大体1/6。
つまり魔晶石を六個繋げれば・・・
はい、僕でも魔法使いです!!ブレスもファイアーボールも撃てます!!
感動!
ただし当たり前ですが、実験を続けるとミスリルの筒は異常に発熱し、とても危険になりました。
同じように光の魔晶石、風の魔晶石、水の魔晶石、氷の魔晶石でも実験を行いました。
細かな結果は省くとして、大方武器になりそうなのは火の魔晶石、光の魔晶石、風の魔晶石でしょうか。
水と氷の魔晶石は微妙・・・
ま、武器にはなりませんでしたが、これらにも立派な使い道が有るので大丈夫ですが。
ちなみに、風の魔晶石は憧れのウィンドカッターにはなりませんでした。代わりにエアバレット、超強力な空気砲になります。威力は射程内だとゴブさんの頭蓋がボコッとへこみました・・・
内圧で眼球飛び出してエグッ!
そしていづれの魔晶石も、射程距離は六つ繋げてもやはり30mが限界。炎のブレスも10mが限界でした。六つ以上繋げても効果は同じ。
それでは以上の実験結果を踏まえ、魔法の杖を作ってみたいと思います!!