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異世界サバイバル ~チートって何?美味しいの?~  作者: ハニービー
異世界の新天地と共に
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森の焦燥① アクアワイズの長老


 我等、魔獣の森の北東部に住まう水棲賢人アクアワイズは、太古より水の平衡を司る種族。


 魔獣の森がざわめき始めたのは去年の夏頃からであったか・・・

 魔力脈の歪みがより深刻さを増しておるのか、そこかしこで魔力に敏感な、そして特に力ある魔獣が狂いだしておる。





 古よりこの世界は神々から ”歪みの地” と言われ、混沌と哀しみが他世界より漏れ出で吹き溜まりとなる場所だそうな・・・

 そこで暮らす我等はそれでも世界の平衡を保つように各種族が力を合わせておった。


 和と水を司る我等水棲賢人(アクアワイズ)

 

 信と風を司る角鷹真人ブリーゼプレーテ


 思と炎を司る陽巨人サッジョーレ


 そして勇と地を司る豊穣子ヒューマン



 いつしか混沌の中に連携は失われ、力を削がれ、太古の記憶を失い、世界に侵食されて来た。




 我等の多くは和する事を忘れ、信じる事をせず、お互いを想わず、勇を捨てた・・・

 生き延びる為そうせざるを得なんだのだ。




 そしてここに来てのこの変事。

 普段は原初の森からあまり出ぬはずの一角獣魔人エルダーディザスターがフラフラと彷徨い出で、森の生物に甚大な被害を生み出したという。

 しかもはぐれ獣魔人は一匹二匹では無いという話じゃ。


 更にはいつの間にやら力をつけ、東のダンジョンに住み着いた水邪カプリ共が我等の聖水珠を汚し、我が物顔で版図を広げておるそうな。

 他にも緑野の大平原は東のダンジョンから漏れ出す水で溢れ、平原の生態系を破壊しつつあるという。



 これはいかぬと我等水棲賢人(アクアワイズ)の内、未だ古の教えを失わぬ我が部族の半数を集って狂い魔獣の調査と聖水珠の奪還を期してやっては来てみたのだが、いやはや・・・




 突然の異変の原因は、ひょっとすればあの忌まわしい ”次元の生贄” の儀が滞っておるのかも知れんの。時期的にも考えられぬでは無い。

 一角獣魔人エルダーディザスターはその予兆であったのか・・・


 毎年の贄を原初の森から来る ”神々” に供え、この世界の結界の礎となす呪われた儀式・・・

 他の世界の歪み、汚れを少しでも食い止めようとする砂の堤防・・・


 たしかここ百年は豊穣子ヒューマンの期であったはずじゃが、何ぞ手違いでも有ったのか。事と次第によってはこの森どころか世界が滅ぶ。




 それもまた仕方のない事なのかもしれんが・・・

 世界は大なり小なり何かの犠牲の上に成り立っておる。我等の糧となって死に行く魚と同じに、他世界の為の犠牲がこの世界だったとしても栓無き事よ。


 ただ、懸命に生きようとする者たちが不憫でならぬ。






 東のダンジョンは思った以上に厄介な事になっておった。

 うまい具合に急所を隠し、聖水珠をほしいままにしておる水邪の巣窟の討伐は我等だけでは無理かもしれん。

 これでは、狂い魔獣の調査どころでは無いわい。


 何人か犠牲を払いながらも、潜り込ませた斥候の遠見の魔法を見ておると、この世ならざる魔人が一人、豊穣子ヒューマンの女を連れて水邪カプリ共を蹴散らしよるのが見えた!


 その魔人は見かけは豊穣子ヒューマンと相違は無いが、明らかにこの世界の住人では無い。

 おそらくは滅多には来ぬが、他世界からの ”渡り魔人” であろうの。

 渡り魔人の多くは神より授けられし強大な力を持つが、不思議な事にこの魔人は魔力の一片も無く、また無類の戦闘力が有る訳でも無い。

 この世の均衡を保つ働きをするでもなく、また、害するでも無い。

 どちらかと言うと、ほっておけば三日と経たず魔獣の森に飲まれて消えてしまってもおかしくない雰囲気を持っておる。


 にも拘わらず、あっさりと水邪王ロードカプレンを討ち取り、ようよう見れば一角獣魔人エルダーディザスター戦利品トロフィーまで引っ提げておる!


 


 これは天の配材とばかり、再び現れた魔人に助勢を願えば、見事東のダンジョンの異変を治めてくれよった!

 水邪胎カプレナから出た吸魔の魔晶石は、元より魔力の無い魔人には無用の長物じゃろう。くれと言うたらあっさり寄こしよった。

 気前の良い事じゃ。もっとも、これが何か判っておらぬ様子であったが。


 それにしても不思議なものよのう・・・

 このどう見ても頼りなげな若い魔人がのう・・・


 しかし魔人は事もあろうか、あの恐ろしく剣呑な神銀仙ミスリルを素手で掴みよった!我等であれば近寄るだけで串刺しよ! 

 さすがに魔人よ・・・




 しかし、よもや連れておる豊穣子ヒューマンのおなごは件の生贄ではあるまいの?冒険者とやらには到底見えぬが。

 もしそうならば・・・

 あるいは、もしやもすると・・・・・・

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