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振り出した片鎌槍は、シャピーン!カシン!カシン!カシン!と金属的な音を響かせ、流星のように!・・・ごめんなさい言い過ぎです、カメラの三脚のように!伸びて行きます。
狙いは王様半魚人の心臓!
サクッ!
あっさりと、あっけないくらいあっさりと沈む王様半魚人・・・
そりゃそうですよね。生まれたばかりですもんね。意識が有ったかも怪しいです。
卑怯?上等です。安全が確保出来るなら、なんぼでも卑怯になります。何度でも言います!卑怯万歳!リーチは正義!
もうこうなったら勢いで片付けてしまいましょう!
玉はサザエの貝殻を逆さにしたような台座に安置されており、玉を含むその高さは3m近く有ります。
玉を傷つけないよう表面に貼りついている本体の汚い血管に切りつけると、予想以上に激しく悶えます。
ビチビチッっと音を立てながら玉から自ら剥がれ、僕の槍から逃れようとしています。
これの急所って何処なんでしょう?
油断なく槍の刃を本体血管に滑らせながら、観察します。
玉のすぐ上は王様半魚人の胚房があり、その上は遥か天蓋に続いて・・・
有った、あれだ。多分。
岬からでは見えない、突き出た鍾乳石に隠れていた部分。
き、気持ち悪い・・・
天蓋に貼りつき、四方に血管を伸ばしているその中央に巨大な血走った一つ眼が有りました。バイオでハザードな光景です。
あの眼で湖面の様子を伺い、触手血管を動かしていたんですね。玉に吸い付いていた血管が本体ではなく、どうやらあの大目玉が本体ですかね。
おそらく闇夜を見通し、僕が湖畔で行った狩のやり方を見ていたのもこの大目玉でしょう。あの時の視線はこれか・・・
大目玉はカタツムリの目玉のように目を伸ばして周囲を伺っていましたが、僕と視線が合うと目を引っ込め、窪みに収まりました。
目が合ったか~・・・
前回は戦闘になりませんでしたが、今回は戦闘ですね!
気持ち悪い事に僕と巨眼は見つめ合っています。大目玉は何度か瞬きをしています。それが余計に不気味ですね。
その時、汚い血管の末端の蕾が一斉に動き始めました。
今までの間隔を無視して、次々と洞窟半魚人を間断なく量産し始めたのです。
僕の槍が届いていない、玉に貼りついたままの血管が痙攣するように脈打っています。
まるで、無理矢理魔力を吸い取っているかのように・・・
雨のように降る洞窟半魚人。中には未熟過ぎて腕の無い者、片足が無い者までいます。ひどい蕾になると、固まりきっていない物までが、内蔵と共に落ちてきています。
それに合わせて玉の儚げな輝きが、さらに弱々しく明滅しだしました。
これは早く決着をつけないと・・・
敵はどうやら無理矢理玉からエネルギーなり魔力なりを吸い出し、焦り倒して手下を量産し始めたのでしょう。
湖面を漂う鰭脚類人も驚いているようですが、すかさず迎撃しているのは流石です。
ネイに危害を加える洞窟半魚人が居ないか視線を走らせましたが、居残りのカクさんとご隠居様までが魔法を飛ばしてガードしてくれています。
無論、ネイ自身も波刃細剣を抜き放ち、迎撃の構えです。相変わらず凛々しい!
それよりも僕はあれをどうにかしませんと。まずはエネルギー源のカットですかね。
玉の裏側に回り、まだ貼りついている分をこそげ落とすように刃を滑らせます。
ビチャビチャと粘液を撒き散らしながら汚い血管が悶えます。ですが、今度は槍の刃の届かない位置に新たに血管が吸い付きます。
ダメだ、これではイタチごっこです。
跳びあがって血管を斬りつけても血管は太く、いくら片鎌槍の刃が謎過ぎる程鋭利でもとても両断は出来ません。
仕方ない、作戦変更、先に目玉を潰します。