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僕はそっと近づきます。
そのゴブさんは俯せに倒れ、水の中に顔を浸しています。そう言えば、槍のゴブさん以外にもヒャッハー状態のゴブさんが何人か川に落ちていたはずです。
それこそにじり寄るようにして静かに、静か~に近づきます。勿論周りの警戒も怠りません。
さらに様子を見ます。
うん、死んでる。いくらゴブさんでも五分は息を止められませんよね?
ようやく僕は警戒を解いて立ち上がります。それはもう華麗なへっぴり腰で近寄り、惚れ惚れする程美しい所作で手を震わせながら、右手の杖を伸ばしてゴブさんをツンツンします。
あまりの怖さに心臓はバクバクです。もう、突然グワッと立ち上がったゴブさんが、大口を開けて噛みついて来る未来しか見えません。
やっぱりリーチが欲しいなぁ、怖いもんなー、出来れば飛び道具が良いですよねーとか考えながら、無事にツンツンを終えた僕は、なんと大胆にも一歩踏み出します!でも二歩後退ります。
あんまり遊んでもいられません。勿論遊んでるつもりはありませんけど・・・
とにかく覚悟を決めてゴブさんに近寄ります。急に起き上がられた怖いから、杖で肩を押さえて近寄るチキンぶりに我ながら言い訳します。
・・・戦場では勇敢な奴程早く死んで行くんだぜ・・・
戦場ではないですけどね!
死んでたら死んでたで死体が怖い!僕ってわがままでしょうか?だって実際目の前にちっちゃいおっさん死んでたら怖いでしょ?近寄りたくないですよね?
そのゴブさんは結局溺死のようです。持ち物を漁りたいけど触りたくない。出来れば見たくも無い。しばしの葛藤のあと、僕は明日の分の勇気を前借した気分でゴブさんを観察します。
はい、何も持ってない。ふんどしのような布一枚で手ぶらです。ひょっとしたら槍ゴブさんかもしれませんね。さすがにふんどし剥ごうとは思いません。もう色々と無理!
杖でゴブさんを下流に流そうと思ったのですが、なんか生理的に嫌で川原に落ちてた流木的な木で押し出します。さらばゴブさん、ゴブナイフと杖は有効に使わせて頂きます。
何となくゴブさんを見送って手を合わせておりますと、新たにゴブ色を発見、しかも二体。
チャラララーン♬ シンタローはゴブ死体耐性一を手に入れた。ゴブ死体がちょっとだけ平気になった!
ならんわ~っ!
自分のボケに自分で突っ込みます。慣れるどころか死体が二倍なら素直に怖さ二倍です!
それでも死体をあらためなければ・・・
ホントに死体耐性とか付いたら嫌だな~!便利なんでしょうけど、なんか嫌っ!