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僕が放った矢は狙い違わず蕾の中央を射抜き、矢羽の根元付近までめり込みました。
次の瞬間狂ったように蕾が悶え蠢き、腐汁のような粘性の高い液体を撒き散らします。
みるみる変色してしぼんでいく蕾。それでもその質量は人間にして二人から三人分は有るでしょう。
やがて引きつったように痙攣する蕾は、それでもビクビクと蠕動を繰り返しながら根元から千切れて湖面に落下してきました。
それを迎え撃つ炎の魔法が三条飛び、落下する肉隗を消し炭に変えます。
鰭脚類人の迎撃チーム、よく見るとプルンプルンの綺麗なお姉さんも混じってますが、見事なレスポンスです。
そして何よりその魔法の出力!
三人分の斉射とは言え、人間数人分の質量の肉隗を空中で消し炭に変えるなんて!
良かったー!敵対しなくて良かったー!!
射程距離の関係で迎撃しか出来ないようですが、恐ろしく高い戦闘力です。見かけがオットセイみたいに可愛くて、おっぱいプルンプルンでも凄まじい攻撃力です。おっぱいも凄い攻撃力ですけど・・・
さっきも反省したばかりですが、もう一回猛省しましょう!乏しい情報で判断してはいけませんね!
そして僕の視線を追ってか、ネイが後ろから唸ってます。
色々反省しましょう!
ごめんなさいネイ!これは男の本能です!
僕の戦果に安堵したのか、御隠居様とスケさんカクさんが視線をかわし、頷き合っています。
しかし、満足したわけでは無いでしょう。
本命はあくまでもあの汚い血管。
でもどうしましょう。
この距離なら狙撃出来ない事はありません。玉を避けて、血管の太い所に矢を当てる自信は有ります。標的の大きさから言うと、むしろ温い距離です。
しかし、万が一と言う事があります。
そしてこういう場合、その万が一が起こりやすいのです。テンプレですよね?
そしてその万が一、一万分の一のハズレを引く自信も僕には有るんです。
何故なら、それが僕という人間だからです。
ので、狙撃は無し。
一番確実な方法はやっぱり乗り込んでって、片鎌槍でバッサリかな?
妨害無しにそんなに簡単にいくなんて思えませんけど。
ともかくあのお豆腐島に渡る方法。
お豆腐島の絶壁を登る方法。
相手の手札を見る方法。
討伐する方法。
これらを考えましょう。
御隠居様に身振り手振りで血管が持つ攻撃方法を訊ねます。
あかん、さっぱり判らしまへんわ・・・
御隠居様や、スケさんカクさんまで一生懸命ボディランゲージで伝えようとしてくれるのですが、さっぱり読み取れません。
三人が三様の謎ジェスチャーをしてくるので余計にカオスです。
ネイもお手上げのようですし・・・
僕はその場に腰を下ろして考えこみました。
島まで渡るのは泳いで行けば大丈夫でしょう。冷たいのさえ我慢すれば・・・
でも当然鎧は脱いで行かなければなりません、それは嫌ですね。
何だか判らない相手にケンカを売りに行くのに、全くの無防備なんて無理です。
鰭脚類人の迎撃チームに担いでもらって島に移動する?出来ればプルンプルンのお姉さんに・・・
いや、それでは後の夫婦生活に支障が・・・
じゃなくて、もし移動中何らかの方法で攻撃されて僕が水の中に落ちたら、溺れる前に確実に救出して貰えますかね?
可能な限り頑張ってくれたとしても、攻撃を受けた=戦闘中、その最中に確実に拾ってもらえる可能性ってどれくらいでしょう。
鎧含む重装で、立ち泳ぎとかほぼ無理ですよね、昔のお侍さんは泳げたって言いますけど。
仮に泳げたとしても、確実に狙い撃ちされますよね。
ここから見る限り水深は確実に僕の身長を越えてます。
アクアラングでもあれば行けるのに・・・