113
五体投地と言うのは、全身を地面に投げ出し相手に最上の敬意を表す、土下座の上を行くへりくだり方です。
言ってみれば究極の土下座。微妙に違いますが・・・
・・・なんで?
えーっと、とりあえずお顔を上げて頂いても?
ある意味、戦闘になるより居心地悪いんですけど・・・
まあ、これが鰭脚類人のデフォルトの挨拶の仕方という可能性は有りますが、左右の護衛さんはお腹を見せての服従のポーズはいけません。
これは明らかに降伏してます。
自然界において弱点を相手に晒すと言うのは即ち、死を意味します。
僕だからいいですけど、あんまりそれやっちゃ危ないですよ・・・
それとも何かの罠?
助けを求めるようにネイを振り返りますが、ネイも困惑した様子です。
その内ごそごそと鰭脚類人のお爺さんが起き上がってくれまして、やっとコミュニケーションが取れる体勢になってくれました。
しかし、両手は揃えて地面に着いており、頭はあくまで低く、準土下座姿勢を崩しません。種族的な姿勢があるので、しょうがないっちゃしょうがないですけど。
そして何やらお話をはじめました。
お爺さんのお話の内容は・・・結論から申し上げます。
さっぱり判りません!そりゃぁもう微塵も判りません!
僕は当然として、ネイにも判らないようですね。
話とかそれ以前の問題ですよねぇ、まず生物としての種が違います。言葉以前に色々なものが違いすぎますもん。
ネイとも言葉が違いますが、心が通じていますからね!問題ありません。
ちなみにお爺さんのお話はまだ続いています。両サイドの護衛さんはお腹見せたままです。
とりあえず僕は弓をしまい、攻撃する意思の無い事をアピールします。
本来なら、弓の弦を外すのが正式でしょうが、そこまで僕は油断できません。
盾をしっかりと握り、ソニックバンカーのトリガーに指をかけ、さらにいつでもバスタードソードが抜けるように右手は空けておきます。
お爺さんのお話はまだ続いています。
心なしかひっくり返ったままの護衛さんの表情も、うんざりしたように見えます。どこの世界も部下は大変ですね。
どうしましょう・・・
さっきからずっと途方に暮れっぱなしですね。ネイの方を見ても呆れているみたいです。
なんか、気がそがれたと言うか、白けたと言うか・・・
お爺さんには悪いけど、お互いこれじゃ時間の無駄ですよね。
得々と語り続けるお爺さんの前を、ネイの手を引いてそっと通り過ぎます。
お爺さんは気付きませんが、護衛さんは気付いて僕を見上げてます。申し訳なさそうな顔をしています。
中腰で手刀を切りながら通過し、玄武岩の通路前を通り過ぎた辺りでお爺さんに気付かれました。
Ooboeeee!
足速っ!
お爺さんなのに!鰭脚なのに!
あっと言う間に回り込まれて再び五体投地・・・
なんなんですか!もう!
持病の話進まない病が・・・
ブクマ、有難うございます。
よろしければ評価もお願いします。