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降りしきる雪はとうとう積雪1mを越え、屋根の雪降ろしが大変です。
ネイが特に騒がないので、この森周辺では毎年これぐらいの積雪なんでしょうね。
家は順調に改造が進み、キッチンに据えた親蜘蛛の特大魔石が家のほぼすべての魔力を賄ってくれています。お風呂、新調したサウナ、キッチンの瞬間湯沸かし、コンロ、岩をくり貫いて棺桶式に作った冷蔵庫等です。
オーブンは薪の方が火力が有るので、薪オーブンのままです。暖炉もそう。
今やサウナ上がりのネイは、パンツ一丁で首にタオルを引っかけ、真冬だと言うのに冷蔵庫から出した冷たいお茶を美味しそうに氷を入れて飲み、袖箭造りの時失敗したスプリングを再利用して作った革張りのソファにふんぞり返る。という荒技を成し遂げています。
隣で僕も同じことをしているので大きな事は言えません。
リラックスは大事です。
雪は積もっていますが、晴れた日は外出もします。保存食だけではなく、新鮮な食材も欲しいですし、この時期にしかない物があるかも知れません。
ホントはスノボの方が得意ですけど、スキーじゃないと平地や起伏は無理ですからね、スキー板とストックを作ってクロスカントリーで見回りです。
悠久盆地の傾斜とか滑れたら楽しいでしょうね!惜しむらくはリフトが無いから帰りは地獄というところでしょうか。
雪で沈みますから重装備は無理ですし、遠出もしません。せいぜい冒険深森の浅い所どまりで出かけます。
サングラス作っといて良かった。まさかこんな時に役にたつなんて思いもしませんでした。
真っ白な兎に似た小動物や、雪を泳ぐように移動するイルカのようなアザラシのような不思議な動物を見かけます。とても動きが速いです。
新しい弓---マーキュリーボウと命名---の練習を兼ねて狩をします。
結構凶悪な性能を発揮してくれまして、イルカアザラシを一頭仕留めました。基本野生動物の肉は脂肪が少なくパサパサですが、これは脂が乗っていておいしそうです。
でももっと練習して最低矢を三本は速射出来る筋力を付けなければ・・・
午後は例によって崖城に戻って工作です。
今作っているのは盾です。
厨二病をくすぐるガン〇ムみたいなカッコいい盾を作りたいと思います。
そう言えばあのアニメも不思議ですよね。盾とは敵の攻撃を受ける物です。その盾の中にミサイルを仕込むなんて!!暴発したらどうするんでしょう?
やはり盾に仕込む武器と言えばアレですよね!ロマン武器!!
そう、パイルバンカー!!
もう無茶苦茶な武器です。物理法則ガン無視ゆえのロマン!!
作用反作用の法則というのが有ります。
敵の装甲を貫く力が有れば、そのまま自分にその力が返って来ます。敵の装甲を貫いたと同時に自分の腕が肩から取れる・・・ぐらいの諸刃の武器。
それがパイルバンカー!
それゆえのロマン!!
と言う訳で盾にパイルバンカーを仕込もうと思います。
材料はどこの御家庭にも一つはある、真っすぐに伸びた螺旋状のデスペアパイセンの角です。
これを盾の二股に分れた下端部分の中央に、ややはみ出るように埋めこみ、盾の内側に作ったハンドルのボタンで魔石に繋がるようにします。
はい、無反動で衝撃波を打ち出すパイルバンカーモドキの完成!!
物理法則?何ですかそれ?これは謎現象のパイルバンカーですよ?もうすでに杭ですらないですけど・・・
試射もバッチリ!何故か出力まで上がって、その分魔石のエネルギー消費が凄いです。
縦120cm程、横50cm程の洋凧型の湾曲した盾です。ヒーターシールドという種類の盾ですね。
表面には虎縞のトンボ革を接着し、縁は黒トンボ革で縁取りします。なんてアーミー・・・
ロマン武器とは言いますが、これは実際僕の最大火力です。なんせ岩を砕ける非常識な攻撃力があるのはこれだけですからね。射程が僅か50cmという近接型なのが残念です。
何故これを先のダンジョンアタックに行く前に思いつかなかったのでしょう。これがあれば随分と楽だったでしょうに・・・
僕の中でデスペアパイセンの角は、岩堀道具という固定観念に捕らわれてました。反省です。
しかし最大火力でも実を言うとこれは最終手段です。僕の本音はこれの射程距離まで敵に近づきたくありません。
遠距離攻撃こそ至高!
絶対安全圏からの一方的な攻撃こそ神!
リーチ万歳!
・・・背筋鍛えて弓を頑張りましょう。今度はまじめに!!