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予想通り、バネの制作が一番難しかったです。
一定の間隔で巻き上げると言うのは手作りでは限界があります。
成功の切っ掛けは昔見たあるテレビ番組のシーンを思い出した事。
有名なパティシエがチョコレート細工を作るのに、薄く延ばしたチョコレートに包丁を当てて切ると、クルクルとそれこそバネのようにチョコレートが巻かれて切れて行くのです。細工菓子と言うんでしょうか。
同じように彫刻刀で木を彫っても木くずは丸まりますよね。あれです。
難しいのは素早く、同じ角度で、同じスピードで、同じ力加減で!
そして、核とゼリーの配分です。
相当な量の水銀先生素材をダメにしてしまいました。心なしかネイの視線が痛いです。
いや、無駄にはしませんて、この山のように失敗した渦巻きだってきっと何かに使えますって!ナニにとは今は思いつきませんが・・・
出来上がった筒にバネを仕込み、ストッパーをはめこみ、ストッパーを外すラッチを付けます。
矢は同じ水銀先生製の、尖った鉛筆のような矢です。下にしても落ちないように蓋には樹脂先生製のパッキンが付いてます。
全体重を乗せてやっとこセット。ちょっと強すぎたかな?
10m程先に立てた松明の燃えさしに向け、試射です。
慎重に狙って・・・いざ発射!
カシンッ!ヒュンッ!パツンッ!
細かい木片を飛び散らせて矢は半ばまでめり込んでいます。成功です!
でも、思ったより強い・・・安全装置付けとかないと事故が起きるかも・・・
出来上がりは長さ30cm直径1.5cmくらいの銀色の棒です。有効射程は検証の結果15m程でしょうか。上出来です。ブレスの範囲外ですもんね。
先端近くにストッパーを外すラッチがあり、それを押すと矢が飛び出る仕組みです。取り敢えず十本ばかり作ってネイにも半分持たせます。
ネイもずっと作っているのを見ていたので、僕が何を作ったのかは理解しているでしょう。呆れ顔が証明しています。一応練習させましたけど、相変わらず器用ですね。すぐに上手になりました。
ただ、ネイの力では再装填出来ません。携帯装填器も作らないと。後回しですけどね。
続いて作ったのは蝶番、釘等です。 これも鋳型を持ってきていたので簡単です。事前に樹脂先生でテストしてあるので完璧です。
鏃も作りたいですけど、鋳型を用意していないので帰ってからですね。
現地で色々作るのは、それだけ持ち帰れる素材が多くなるからです。原液を入れる容器は有限ですからね。
ああ、無限収納・・・
カンナや鉞、鑢、ノコギリはちょっと精密に作りたいので崖城に戻ってから作りましょう。
雪に閉ざされている間にじっくりと作って行きたいと思います。
水銀先生での工作は後は釘を量産するだけです。蝶番は二十個程作れば今の所充分です。
後は拾った波刃細剣に仮の柄と鞘を付けてネイに持たせます。ゴブの剣よりも随分軽いですし、良く斬れます。
崖城に戻ったら綺麗なヒルトを作ってあげるからね。今はこれで我慢してね。
ネイも嬉しそうです。波刃細剣片手にクルクル回ってます。実際には使わせないように僕が頑張ります。
さあ、明日も頑張りましょう!目標はあと先生十匹!