89
放った矢を出来るだけ回収し、水銀先生のお出ましを待ちます。
森の樹脂先生は気温が下がり、出て来なくなりましたけど、ダンジョンは関係ないようです。
三匹ほど現れてくれました。
元気そうなお姿が見れて安心しました。お仕事終わられましたら回収致しますねー。
その前に、警戒は解かずに剣持の両生類人の遺体も引きずって来て、当然剣も回収します。
この剣はいわゆるカットラスですね。海賊刀です。
元は農具の鉈をサーベルを参考にして武器にした刀です。短くて取り回しが良いので、狭い船上で使われていたようです。故に日本では舶刀と訳されるらしいですね。
海賊刀の方が解り易いですけど、海賊だけが使ってたわけじゃありませんもんね。
これも、水銀先生製のようです。但し拵はやはりボロボロ。特徴的なハンドガードも材質が違うようで腐食してボロボロです。
やはり刀身だけ頂きです!
周囲に先生を侍らせ、僕は黙々とゴブ斧で戦利品を分解していますと、ネイが心細いような声を上げて僕を呼びました。
「Ar Sintaro・・・Dahgling・・・」
後半のセリフは最近ネイが僕の事を呼ぶときに使う言葉です。多分妻が夫を呼ぶときの言葉だと思います。より甘えた感じの言い方をしますもん!発音もダーリンに近いし!そう思ってもいいですよね?
急いでネイの所に行くと、顔を真っ青にして水銀先生を見ています。先生が怖いんでしょうか。
怖くないよーって、先生を抱き上げて見せると、顔をますます引きつらせて固まっています。
両生類人の時はそんなに怖がらなかったのに不思議です。
笑顔でポンポンと頭を撫で、僕は作業に戻りました。
頭の中はさっきの戦闘のシミュレーションです。次に上位種に当たった時にどう対処するかの反省です。
上位種、洞窟半魚人と呼称します。
厄介なのは鱗の防御力とポンポン出てくるブレスですね。炎のブレスも怖いですけど、冷気のブレスは出力が段違いでした。
射程距離は5mから10mと言った所でしょうか。炎のブレスはその半分くらい。個体差も有るでしょうから絶対ではありません。
その間合いでは、僕の攻撃手段は弓しかありません。
最初から構えていれば別ですが、弓での攻撃はモーションが大きいので、矢を抜く、つがえる、引き絞り、狙って、放つという動作の間にブレスは吐かれるでしょう。
結構これは致命的・・・
小さなモーションで5m以上の距離を詰められ、ブレスのシークエンスを止める攻撃手段が必要です。
槍で突っ込んで刺すのは可能でしょう。しかし、集弾戦でそれが出来なかたら?
例えば投げナイフ?
あの大きな口に放り込めば別に刺さらなくてもいいのでは?
石でも投げる?
ブレスのシークエンスはそんなに長い物では無かったように思います。
口を開く、溜めながら狙う、吐く。
対して僕は、抜いて、振りかぶって、狙って、投げる。
弓よりはモーションは早いでしょう。
うーん、出来ない事は無いかもしれませんけど相当条件が厳しい。自分の命をベットして賭けようとは思いません。
そうだ、あれならいけるかも!
後で早速研究してみましょう!スペツナズナイフ!
メリクリー!
クリスマスプレゼントに感想、評価、ブクマ下さい!