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僕も随分図太くなったものです。
僕が今回の仮拠点に選んだのは前回バスタードソードを見つけた横穴です。洞窟の出口にも近いし、地下墓地湖の通路にはもっと近いです。
中の遺骨と各所に散らばっている遺骨も集めて、財宝の近くに埋葬します。誰だか知らないけど安らかにお眠り下さい・・・
横穴の周りに親蜘蛛の糸で鳴子のアラームを張り渡し、狩りに不必要な荷物を置いて準備完了。
時刻もそろそろ夕方なので今日の所はこれでおしまい。狩りは明日からです。
さあ、今日から本格的な狩りです!
外の方が寒いからか、玄武岩の通路は暖かく感じます。ダンジョンの中の気温は一定なのでしょう。ダイゴロー号を押しながら進むと、むしろ温かいくらいです。
ネイは元からほとんどしゃべらず静かな娘ですが、今は息まで潜めています。暗がりで怖いんでしょうね。たまに毛皮の帽子の上から頭を撫でて、安心させてあげます。
地下墓地湖の入り口に到着しました。
付近には前回遺棄していった松明が蹴散らされたように散らばっています。持ち手は少し湿った感じがしますが、燃える部分は充分油と蝋が染み込んでいるので使えそうです。
前回と同じように門灯と親蜘蛛の糸を仕掛け、ネイに絶対に糸の向こうに出ないように伝え、弓を構えさせます。ネイの弓の腕は正直あまり期待出来ません。ネイはそこに居てくれるだけで僕の支えなので万事オッケー。
今回はさらに通路の外の石筍にも糸を仕掛けます。丁度足が取られる位置に張り渡したところで水面に波紋が出てきました。急いでネイの居る所に戻ります。
ネイには背後を警戒させ、僕は弓を構えて湖を見据えます。
来ました。両生類人その数八体・・・多い!
先頭の個体は槍のような長柄を持ち、その左は剣のような物を持っています。他は無手。
おや?先頭の個体はいつもと姿が異なります。眼が無いのは同じですが、首の部分に半魚人のようなヒレが付いています。
しかも全身鱗に覆われ、色は岩のような鉛色です。上位種でしょうか。
悠長に観察している暇はありません。僕は弓を引き絞り先頭の個体に矢を放ちました。
肩に当たった矢は鱗に弾かれ明後日の方向に飛んで行きます。ああ、回収できない・・・
そんな事考えている場合ではありません!方針変更、まずは数を減らします。
剣持ち両生類人を倒したところで上位種がすっ転びました。
しかし足は無傷!マジですか!鱗硬い!!
他にも足首を失った両生類人は三体、とりあえず放置で無傷の残り三体の内二体を矢で沈め、最後の無傷の両生類人をダイゴロー号に立て掛けていた片鎌槍で糸越しに仕留めます。
立ち上がり、迫る上位種。
喉元を槍で貫かれた両生類人の背後から不穏な気配。
何となくヤバそうな間、とでも言うんでしょうか・・・
パキーン・・・!
一気に気圧が下がったのが判ります!空気が!凍る・・・
冷気で眼が痛い!開けていられないくらいの恐ろしい冷気。槍で貫かれた両生類人の体の遮蔽に入っていなければ、まともに冷気を喰らい、全身に恐ろしい凍傷を負っていたでしょう。
これは上位種のブレス!槍を保持する手がヤバイ!グローブ越しでも冷気が痛いレベルです。感覚が無くなって行く・・・
ネイは!?
ネイは無事です。ブレスの範囲外、しかもダイゴロー号の向こう側です。良かった!
目の前の両生類人がカチンコチンに凍り付いて、逆に手を放しても自立しているので助かりました。上位種、炎ちゃうんかーい!
氷のブレスはそれからすぐに止みましたが、間髪入れずに今度は負傷した両生類人の炎のブレス!二方向!!
狙いは僕ですが凍った両生類人がやはり遮蔽になってくれています。
ああ、暖かい・・・