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陽炎と泡沫  作者: 実嵐
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組織としての過ち

古木の疑問を解決するためにパンフレットを申し込んだ会社がないか探してもらうことにした。いちいち自分で取り寄せることをするよりサイトなどで一括で頼めたりするのでそれを優先するのではないか。

「笠原はきりがついたか?」

「親父のことですか。全くですよ。親父の部下は塀の中にいるんですけど、会う度に謝罪は受けるんです。謝ったら済むなんて考えが生まれなくて・・・。親父はかえって来ないし、業に対してはもういいんですよ。」

心からの謝罪を受けていないのだろう。自分を擁護するような言葉を付け加えてしまうために抱えてしまうのだろう。黒い関係があっても大丈夫だという勘違いの塊のやくざじみた格好した人が言っていたりするのだが、世間との甚だしい勘違いを表に悪びれずさらけ出すのだ。そんな人は擁護するのは権力や信頼ではない。ただ頭を下げて指示を受けている駒であって切り捨て覚悟なんて無様な姿なんてできないのだろう。くだらないプライドとわけのわからない持論を畳みかけているのだ。ため息よりのあきれた顔を見せているだけなのだろうから。

「業はな、たどってもたどっても行い返せないことだからな。お前はすごいよ。俺は何もできていないから。」

「やってますよ。命日の度に手紙を置いてかえっているのでしょう。古木さんの所為じゃないんですから。抱え込まなくていいんですよ。もしいまだに抵抗するようなら俺も関わりますよ。俺も同じ立場だと。割り切っている部分も少なからずあるのは確かなんですから。」

かばう必要のないなら構わないのだが、判断を奪ってしまうのだけは避けたかったのだ。笠原も聞かされた時は驚きは隠せなかった。近くに来ただけでそんなことを言われてしまうのなら応援に行く奴も減る。むしろ、行かざる負えないとしても行かない選択を選ぶ可能性も確実に増えると思った。息子が亡くなったということでは情はあっただろうが、追加された言葉は違ったのだ。同情を逆手にとってしまったのだろう。

「そうだな。笠原がそういうなら。俺もな、事件が起きたときは動けなかったんだよ。目の前に起きたことって案外動けないんだなって思ってしまってな。納得しかけたんだ。共犯だとか言われても何とも思わなかったんだ。」

過ちの重さは違うというが、存在感というのは変わらない。変わってはならないのだろう。反省なき組織は変わらないうえに同じことを繰り返す。言い訳は同情を加えたりしながらしかできない。


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