独裁を選ぶとき
穢れた世の中を変えているなんて大げさなことを吐いていると何処か自分を愚かだと思ってしまうのはダメなのだろうか。信じられる自信をもってないのに積み重ねていることを有無とするのかと思ってしまう。
「お前はまだ、警視庁にいるんだろう。捜査一課のエリート集団に。」
「エリート集団じゃないよ。欠点ばかりでそれを補うことが重要になってくるんだ。俺が制服警官でいたかったことを知っている人だ。悪い人じゃないし。」
「いいよな。補えるだけのものをもっている人で。俺は地方のところに入ったのはいいけど、最終的には金でのごたごたに巻き込まれてしまっただけで大したことせずに辞めたよ。制服警官の時のことをよく思われているだけだ。」
浅利の飲んでいたコーヒーの氷が沈黙になる。なってもどうにでもなるのだろう。制服警官は通過点だと思っていた彼にとって刑事になるということは喜びもひとしおだったはずだ、その人生を壊してしまうのだ。身内を守るのか、使い捨ての駒としか思っていないのかはっきりしないのだ。
「お前がいた班って何人いた?」
「確か・・・10人くらいかな。それがどうした。」
「今、いるところは班長含めて4人しかいないんだ。」
「少なくないか。」
驚きに満ちたような表情をしている。当たり前だ。少ないのがいいと思わないだろうが・・・。
「そうだろ。けどな、別の班の班長の指示を聞くこともあるからちょうどいいかな。その言うことを聞く班長は今の班長の警察学校からの仲らしいんだ。その人も恩恵を感じているし、考え方も似ているからってことになっている。」
「変わっているとしか思えないな。そんな人がホシを上げるんだ。」
「確かにな。もともと警察官にもなりたくなかった人だったらしいけど。親父さんの言うことを聞くんだから。」
人というのは権威というものに憧れを持つのだろうか。その権威が凶器になり替わった時に驚くのか。当たり前のように過ごすのだろうか。遠くの存在となることがうまいと思うのか。人の死にかかわった時に発想の転換をしなければならないと思うが、できないらしい。うわべの言葉をたたきあげて信頼をつぶす。独裁を自分で作り上げて被害者じみた言葉で返すのだ。それは率いていると思っているのだろうか。勘違いを選ぶのだろう。選択肢すらうまくないのに謙虚でもないのはどういう判断なのだろうか。見えないのに闇に落ちてももがかないのはいいのだろうか。今だからやるべきではないのか。




