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陽炎と泡沫  作者: 実嵐
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権力保持者

古木はうまそうにコーヒーを飲む。時間をつぶしているというつもりは全くといっていいほどないのだろう。市橋は横顔を見ても正面を見ても読み取れないものは同じなのだ。

「班長は皆川さんと話してましたよね。なんの話をしていたんですか?」

「卓の話だよ。孫が死んだと聞いたときはかなりやんでいるように見えたよ。たぶん、他殺だろうとも言っておいたから。ホシ捜しかな。」

「落ち着いてますね。」

「泣き言は今連ねても時間が変わるわけでもないしな。俺のことを信頼してくれてもいるんだ。おかしな話だろう。泣き言や言い訳で解決するならこんな無駄と思えることもしないよ。」

閑古鳥が鳴いている喫茶店は昼になるか3時になると多く来るのだろうと思えたのだ。市橋を見つけているのは古木の本音を話さないことくらいだ。

「警察にできるのは過去の事件をいかに解決することで復讐を止めることにつながるかなんだ。それを冤罪を作り上げるからわけがわからなくなるんだよ。」

「そうですよね。権力にあっさりと押し負けて、キャリアだのノンキャリアだの被害者に関係あるのかという話ですよね。しょせんはくだらない嘘をつくことになるのだろうとしか思ってないんですよね。」

古木と何時まで会話ができるかがわからないといっていた水沢の気持ちが分かった。何処かに闇を感じてしまう。生まれた闇を何処かに追いやる武器など持ち得ていないのだ。言葉だといっても冷たく、感情のない言葉だと作業上に存在するただの置き去りにされたものに過ぎない。政治家は偉そうに後手を先手だと偽り、紙もデータも偽り、いう言葉でも偽るのだ。何処に信頼という文字を残せるのか。むしろ、残してはならない言葉ばかりを積み上げているのだ。目立つのと有言実行というのは違うのだ。目立つための謳い文句を連ねるのであれば、1つでも成立してからにしてほしいものだ。どれも中途半端に置き去りにしてむしろ、成功したなどといっては嘘も機能しないだろう。家族を守るとする党自体も欲望にまみれてしまっている。戦わずして得られる権力を喜んだり、人のためが自分のために置き換えられる官僚はどうなのか。なりたいと思うだろうか。変えたいと思うか。同じように恩恵を受けたいと思う位だろう。

「ほざいてもあがいてももがいても無駄なのは知ってるけどな。差別を正当化に使う政治家は狭い許容で戦っている証なんだよ。」

「戦っているんですか。俺には遠巻きから観察としか・・・。」

「正解。」

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