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陽炎と泡沫  作者: 実嵐
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時のエール

コーヒーが汗をかいて水で薄まるくらいになってようやく古木が出てきた。皆川実継は聞いた内容が驚きと悲しみに満ちていた。

「実継さん、来るか?たぶん、事件になっているからすぐには帰らないのは確かだ。俺の力をもってとしか言えないけど・・・。俺は解決するよ。」

「無理しなくていいよ。俺はこんな祖父を尊敬してくれた孫がいた記憶があれば十分なんだ。多くを求めて失うのは張り知れないから・・・。」

古木から飛び出してくる言葉ははっきりとした曖昧な答えではない。解決すると断言しているのだ。うやむやにして何になるというのか。後回しにして後の人に着けを回しているだけだ。一生懸命に逃げているのは嫌なのだろう。歩く歩幅が少し大きくなるくらいで大して無理をしていないのだ。市橋は納得しても納得しないことのほうが多いのだろう。スローペースでいいと掛け声なんていらない。構成に関してうるさく言われる筋合いもないのだ。不器用のほうがよかったりするのだ。

「市橋君、孫のことを調べていたんだってね。卓も専門学校へ行くために家庭教師の仕事をしていたんだ。入学金分くらいは稼いでやめようとしていたんだよ。卓から聞いていた。両親から許可も取っていたから部外者に近かったから多くは言えなかったけど・・・、1回の人生を後悔せずに生きろって言ったんだ。大学にいても書き方を教えてくれるわけじゃないってよく言ってたし、此処には来てたよ。」

「そうですか。かなり決意の強い人だったんですね。作家になるのが夢だって言ったら普通なら止められるものです。それを理解を得られていたというのはすごいことですよ。」

皆川は好々爺だった。あまりにありふれた人なのだ。夢だとして小説家になろうとしたことはうれしかっただろう。それもかなわないのだ。

「事件のことは調べてほしいけどな。詩郎、光ちゃんや一止、誠治も大切にしろよ。部下を大切にしろって水沢君も言ってるらしいけど、根本を失ってはダメなんだからな。俺も一止や政治の作品を編集する詩郎を見てみたいんだよ。」

「わかったよ。事件もほどほどだなんて言ってられないのはわかってるだろう。刑事としての定めは事件の解決と事件を止めることであってな。何時かなんてほざいてられないんだよ。」

責任感に満ちた希望の言葉は偽りのない声になって届いた。情は心を動かすものなのだ。動かされないと何もならない。無理やり動かしてもただのいうことを聞く駒になっただけで意味がないのだ。


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