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陽炎と泡沫  作者: 実嵐
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後悔

安西の言葉は何処か懺悔が含まれていた。市橋とは軽々しくつぶやくのはいかに愚かであるかを思ってしまった。吐いた言葉は救いようのない加工がされて飛び出してしまったのだ。彼女は窓を見つめている。いまだに2人は出てきそうにない。

「安西さんは知ってたんですか?班長がもともと制服警官で終わらせて作家や編集者の道に行こうとしていたことを。」

「知ってたわ。むしろ、息子から聞いてたの。無気力に見えても最低限以上をこなす変わった人がいるってね。聞いてないように思われて怒られても素知らぬ顔をするの。聞いているから行動するのだから指図を受けることじゃないってね。腕はすでに見込まれていて刑事に上がらないかという話もその当時あったらしいけど、断ってたのよ。その話を息子に上げた。それから・・・。」

制服警官となってやってきたから刑事までやるつもりはさらさらなかったのだろう。だから、他人に譲った。自分じゃないほうがいいと見込んでいたのかもしれない。市橋は出されたコーヒーを少しすすった。苦味はお粗末にあるわけじゃなく、存在感も大きいわけでもない。仕事を果たしているのだ。

「息子は羨ましがってたわ。あんな生き方を選びたいって。昔から本とか好きで作家になりたいとか言ってたのを主人が止めたのよ。それがあってしーちゃんが作家や編集者になったら作品をもっていくから定めてくれていったらしいの。その話を聞けるのはもっぱら水沢君から。口きいてくれないのよ。だから、家政婦としていて他人のふりをしていれば話してくれることがあると思ったんだけど、失敗ね。」

自嘲気味に笑顔を見せた。安西もまた後悔を積み重ねていた。嘘でも言ってもならぬことを言ってしまったのだ。彼の人生を壊したのだ。聞いていくと結婚した彼は余計に何処か沼に入り込んで知ったかのようだ。光に泣きながら怒られたのだという。けど、付け足すように言ったのは貴方がそんな言葉を言ってくれなかったら出会うこともなかったといわれて、彼女の感情が複雑なのが分かったのだとも言っていた。

「しーちゃんのこと、お願いね。頑固な部分もあるの。けど、全ては人生をかけてやることなのよ。事件にしか視線が向かないのはいつもまでも真剣だからよ。だから、後悔してるの。」

「手探りでもやらないと後悔しますから頑張ります。安西さんも気にしないほうがいいですよ。」

彼女の表情は少し不自然な表情を見せていたことを彼は気づけなかった。

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