幾度
市橋は古木を追いかけた。待ってくれるような人物であることを知っている。覆面パトカーに乗り込んでいた。
「市橋、皆川と限りなく危険な話をすることを覚悟しておけよ。」
「理解してますよ。俺は選ばれた人なんですから。2人の言葉を聞いてたら吹っ切れたんですよ。」
市橋は隣の異様な空気を感じていた。わからないふりをすることがいいことだと正当化をしているわけでもない。走り出した車には見向きもしないのだ。追い抜きに精神を費やす人もいるらしいが阿呆だとしか思えない。時間が短縮するのはかすかなものに過ぎない。政治家が何もしないのだ。自己保身以下行為を喜んでしている。理解してもらうことを嫌っているのかはたまた都合の悪い言葉を聞きたくないから逃れているのか。小道具がうろうろしているだけだ。ラジオも車に流れているので聞いている。
「政治家には何が大切かを知らないんですかね。」
「そうだと思うぜ。法律も憲法も知らないのと同然なんだろうな。最後に失うのは権力だというんだよ。権威じゃない。振りかざすのに楽な権力ほしさの未熟ものなんだよ。」
「それでいて他の奴が同じことをすると切れるんですよね。けど、自分がやっているから効き目がないっていうものなんですよ。」
小さな1歩を嫌うのだろう。遠回りをすることを嫌い、近道を探すのだろう。けがをしようが気にしないのだろう。立ち上がれないときにやっと気づくのかもわからない。皆川の家に行くのは久しぶりだが、驚いてしまう。金を手に入れたから見せつけるためだとは思わなかった。むしろ、立ち寄るなといっているようだ。インターホンを鳴らした。パタパタと音が鳴っている。
「あら、しーちゃん。来たの?」
「安西さん。・・・俺を恨むために此処に来たんですか?脅すために・・・。」
古木の安西を見つめる目つきは明らかに違っていた。以前の優しく見つめるのではなく、敵として見つめているようだった。
「違うの・・・。」
「何が違うんですか?俺が貴方の息子さんが殺されるときに見ていたことをよく知っているでしょう。なのに此処までくるのはそこまで恨んでいるんですか?」
「本当に違うの。・・・水沢さんにあの後怒られたの。守ろうとした奴を犯人だっていうのは可笑しいって。だから、謝りたかった。すぐにでも。だけど、命日に行っても会えない。そして、水沢さんから聞いたの。自殺未遂を繰り返しているがいずれ貴方が自殺をするだろうって。」




