分岐点
班長とか上に立つものが堂々としてくれるのはありがたいのだ。部下がそれを眺めているのだ。行動で尊敬か軽蔑かを選ぶのだ。無駄に上にペコペコしているのは自分ばかりを考えているとしか思えないのだ。水沢においても古木においてもそれに関して全くない。むしろ、上が理解せざる負えないところまで追い込んだのだろう。事件を解決するのに断ち切ってしまえば税金泥棒だの言われかねないのだ。
「お前ら、絶対言ってはいけない言葉を教えておいてやる。それは組織のためだ。どうとったら組織に利益かを考えたら被害者の気持ちをもっていないんだからな。事件を解決する。それ以外余計な持論で戦うな。」
「わかってますよ。班長。俺たちは選ばれた人間なんです。そう思うのって酷ですかね。いけないですか。」
「構わないよ。だって理解してくれているのを知っているから。繰り返して余計だったか?」
苦笑いに似た笑みを見せた。今はこれしか出せないのだろう。安西の事件以降命日に墓に行っては手を合わせているのだ。ただ、安西の両親とは会っていないのだ。あの一言を言われてから会う時間帯を選ばなくなったと水沢は以前嘆いていた。気持ちの変化を知っていないのだ。廊下からバタバタとスニーカーの音が鳴った。ドアを開けるのは何処か強引だった。
「笠原、どうした。慌てて・・・。」
「さっき、情報で入って来たんです。皆川卓の死体が見つかったそうです。重要参考人の死亡ですから。急いだわけです。」
「有難う。渡辺、小寺。行ってこい。俺は皆川さんとこ行ってくるよ。現実ってそんなものだよな。」
回転いすから立ち上がりながら言った。何処か叫びにも聞こえてならなかった。水沢は不安を隠しきれない表情になっている。曇った空が誘うようにしているのだろうか。皆川がかかわっているとみていた。彼の中でホシはわかっている。事件の全てを通しするかのように見えているのだろう。渡辺、小寺は心配そうな顔を表に出しておきながら出て行った。指示が全てだと思っていないのだ。
「水沢。現実は小説より奇なりってこういうことなんだな。」
「お前、見えているのか?」
「何となくだけどな。心配することないさ。たぶん、光が様子を見に来ると思うから出かけたとか言ってよ。一止と誠治は会いたがっているのはわかってるよ。」
家族が来る頃だといったのだ。ずいぶんとかえっていないのだろう。事件にのめりこんでしまってダメなのだろうか。
「伝えておくよ。」
水沢の言葉は悲しみに満ちていた。




