覚悟
渡辺はいつも警戒をしながら、場を楽しんでいた。市橋はまだその状態に陥っていない分、わからないのだ。屋上で見ているとボソッと言った。
「政治家っていうのはな、謳い文句だけはいい言葉を言うんだよ。そこからの行動は期待も何もしないほうがいい。裏切るのが定番だからな。此処が水に飲まれようとも逃げるだろうな。死人が出ようが謝罪より言い訳だ。」
「平謝りのオンパレードですものね。信頼を蓄積するより失墜のほうが価値があるみたいですしね。」
飲み終わった缶コーヒーをかんかんと音を鳴らした。愉快な音とは思わなかった。時代の流れも読むことができない政治家は官僚の言いなりになりおもちゃとなり替わる。大声を出すだけのおもちゃだ。
「それより戻るぞ。此処にいても事件の解決には向かない。俺も此処にいたいがな。」
資料を作ることが得意であるのもあって戻ることにした。捜査一課に戻ると見たことのない人と古木は話し込んでいた。机には恐る恐る座った。
「ちょうどよかった。市橋、こいつは俺が制服ときからの知り合いの奴だ。二課にいるから融通が利くんだよ。」
「市橋といいます。班長に教えてもらっているところです。」
紹介された彼は笑顔を絶やさなかった。きっと聞いていたのだろう。変わった奴だと。
「ですが、どうして二課の人が此処に?」
「簡単な話さ。安西のいた家政婦紹介所をいじって出てきた話を聞いていたんだよ。政治家の住処だった。それも悪のな。」
「たまったものじゃないですね。湯浅も関わっていたからこんなことにあったのかもしれませんね。もともと喧嘩を売ってましたから。」
二課からもキチンとした情報を得ることができるので下手な会議を出ることを好まないのだ。情報を得ることを考えるのだろう。
「笠原を呼べ。がさ入れをしたはずだ。二課から得たデータから今回のかかわりそうなものを探れと伝えろ。」
「見逃すなっていうことですね。」
小寺が納得したように言った。データを見るしかないわけじゃない。皆川卓についても調べがついている。安西も調べるために家政婦紹介所に向かったのだ。そこから出た蛇だったのだ。次いでが次いでではなくなっていたのだ。
「二課も気をつけろよ。危険な現場に行くんだからな。」
「わかってるよ。お前も部下大切にしないとダメだ。俺は班をもっているわけでもないがな。情報があったらまた来るぞ。」
そういって立ち去って行った。安西は過去を探ったのだ。見えてなかったものが見えたから。




