吐き出し
皆川卓は今、行方不明である。大学にも顔を出していないといっていた。大きな教室で知り合いがいない限り、他人のような状況は有無を言わないのである。下手に自分のことを伝えていたとしたら別であるが・・・。
「売れっ子作家の孫が疑われているとなってマスコミは騒いでますよ。」
「わかってる。行動が疑わしいのも事実なんだからさ。駄作を知っていたとも思えないしな。」
駄作だと評価をするのは必ず出来上がってからだ。覆すこともあるのに・・・。出版社の人間でなくとも知っているものでもない。
「市橋、かたっぱしから出版社に電話を掛けろ。駄作の管理が分かれば解けるかもしれないな。」
ぼやくように言ったのだ。市橋は古木がよく知る出版社から小さくわからないところまで電話をして聞いた。それに古木も関わっている。朧気に存在するピースを一生懸命に探しているのだ。証拠も動機も見つかっていない。湯浅も別のところから恨みを買っているのはわかっていたのだろう。
「班長、皆川さんとつながりがあるのは知っていたんですよね。だから、調べている。そうですよね。」
「いじめの主犯格だった。湯浅は親の権力でもみ消してもらった。教育委員会もペコペコとしているだけだった。それで真実を踏みにじっていったい何処に改心の余地があるんだよ。むしろ、調子に乗ることくらいわからないのかってな。俺はこの事件を聞いたとき、やっと天罰が食らったと思った。炎火になぞられて。」
感情的に話す古木は止められるものではなかったのだ。いじめの主犯格はまるで何事もなかったように過ごす日々。それも国会議員になって悪事を行っても悪びれないその姿に怒りを持つのは事実だ。災害に遭った翌日に会見するもの、平謝りしかしないもの、なかったなかったといったがあったのに相手が悪いと他人の所為にするもの。居直り強盗よりも質の悪さは明らかだ。隠すのだ。他人の所為にしたところで裏から操っていた人間がわかるというもの。建前の繰り返しで嘘を吐くのがいいのなら真実を語るものはバカなのか。むしろ、自分の地位や権力しか見えていない人間のほうがよほどのバカだとしか思えない。税金をなんだと思っている。過ちに扱った金を最低賃金で働いて払え。それくらいの義務はあると思う。何が裏口入学だ。巻き込まれた人間が一番被害を受けるのだ。後ろ指を指されながら生きていくのだ。ばれるだなんて思っていなかった証拠かもしれない。いずれ漏れるものだ。




