いうという前提
古木と水沢は隣の席でも嫌な顔をすることはない。腐れ縁にあきれる人もいるのに全くという感じだ。小寺と渡辺は見守っているように自分たちの固定した位置にいる。市橋も何処にいればわからなくなってしまうので座っていた。乱入するようにノックもなしに入って来たのは鑑識の笠原だった。
「防犯カメラは収穫ですよ。困ったことに古木さんの考えているようにしか思えないんです。」
「誰だ?」
「皆川卓です。購入した本の名前が判別できたので確かです。裏に安西さんがいるようにしか思えないんです。」
付け加えるように何処か焦っているように言っている姿は見たことがなかった。落ち着いているのだろうと思っていた。
「先入観を持つな。邪魔になる。」
「すいません。」
素直に謝った。古木の近くにいると考えやしぐさが似てくるものなのか。問いかけたとしても置かれている立場が違うのだと勝手に解釈をして行ってしまうのが性だ。それに存在するのは同情というものなのかどうかは謎なのだが・・・。
「小寺、安西について調べてくれ。渡辺は皆川だ。到底答えは見えているから答え合わせをしているのはわかっているだろうが、頼むぞ。」
「わかりました。安西ってあの安西ですか?」
「嘘だって言ってほしいことくらいわかっているが、そうではない。」
うつむきがちになって廊下に向かっていった。市橋は彼を追いかけた。自販機のコーナーで落ち着かせているのか上下に揺らしていた。
「大丈夫ですか。」
「俺か。大丈夫じゃないな。安西っていう名前を聞いたときから胸騒ぎを起こしていたんだ。」
「どうしてですか?」
「班長が制服警官していた時に殺されるところを目の前に見たといったろ。その時・・・殺された人だよ。その母親が班長の心に傷をつけた人。全く運命だの定めだの言っていたのが嫌になる。」
ののしった相手のことを調べろといっているのだ。事件を起こしてもおかしくないと思ってみているのだろう。今や官僚も倫理とか常識とかない時代なのだ。裏口入学をしたのだから。何処までも見すぼらくなってしまえばいい。他人にいくら愚かだといわれても見えないのだろう。人の前に立つことができなくなってもいいのだろう。傷をいやすとかいう謳い文句を歌って不気味な音をかき鳴らすのか。
「全く情といってもあの人は嫌がるから。」
「そういえば初期のメンバーだったって。」
「水沢さんに頼まれたんだ。残ってくれって。大切な奴を守りたいってな。」




