見極めの力
水沢と小寺は古木の実家近くの商店街へと向かった。防犯カメラがないか確かめたかったが点々とあるだけで有力なものはなかった。落胆を隠しきれないところもあったが奮起を上げた。水沢は喫茶店に目を向けていた。話したいことがあるといっているのと同感なのだ。純喫茶風の店に入った。客はそんなにいなかった。奥のテーブル席に座った。通常、この時間帯は店は開いていないことのほうが多い。救いのように開いていたのだ。コーヒーを頼んだ。
「話があるんですよね。水沢さん。」
「感がよくて助かるよ。今回の事件のホシによってはあいつの行動を注意しないといけないと思った。」
事件の重要参考人として見ていることを考えると危険なのだ。その話をするために連れ出したかったのだろう。それを感じ取った渡辺は起きなかったのかもしれないし、単に寝たかっただけなのかは本人に聞かないとわかるものではない。
「皆川卓と安西さんっていう人を調べている以上重要な人であるという証なものである。単純じゃないよな。あいつも思ったことを隠すとこがあるから。」
「そうですよね。俺たちも気を付けないといけないですから。事件を解決するべきなんでしょうけど、心情的には迷宮入りを望みます。班長は嫌がるでしょうけどね。」
「迷宮入りしてくれたほうがいいよな。泡沫がいることを突き止めて実家が狙われて大体のことはわかってしまっているんだろうけどな。逃げられないよな。」
ポツリとつぶやいた水沢の言葉は小寺も共感していたものであった。この店にはテレビがあった。店主の趣味でチャンネルが変わる仕組みなのだろう。サスペンスが流れていた。熱血漢の刑事と純粋な刑事のコンビであった。そのコンビを見ていると彼はつぶやいた。
「あいつと俺みたいだ。昔の話だけどな。」
「コンビ組んでいたんですか?」
「捜査一課に配属になってすぐのころかな。上の指示もあって組んだんだ。俺は何に対しても純粋に受け取っても喧嘩になることなく受け入れてくれたよ。俺の意見は他の奴の意見とは別と思ってたんだろうな。そう変わらない意見でも俺の意見はあっさり受け入れてくれた。」
水沢は悲し気な笑顔を見せた。やはり以前からのこともあって受け入れたのだろう。ダメだとも言わなかったのだろう。そのころの古木はきっと邪魔ものとしか扱っていたのだろう。捜査もやっていたのか微妙だ。
「今までのことがあったからですよ。班長は見極めただけです。」




