表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陽炎と泡沫  作者: 実嵐
51/109

抵抗力

水沢とひとしきり話した後、時間的にいいと思ったのか古木はそそくさと出て行った。それを追いかけるしかない市橋の状態を見て水沢は彼の肩をたたいて椅子に座った。そこには満足気な表情でもあった。

「頑張ってこい。相も変わらず振り回すあいつに付き合ってこい。古木はいい手本だから。」

「わかってます。いただけでわかりますから。」

市橋は照れ臭そうに笑うと水沢はそっけない態度をとっていたが、内心うれしいのではないのだろうかと思った。

「おい、市橋。おいていくぞ。」

「行きます。待ってください。」

廊下から呼び出しの声は心地よかった。制服警官をしたときでもこんな風に呼んでくれたことなんてなかった。擦り付けあったりするのに巻き込まれないように影を薄くするしかなかった。声のするほうに走り出した。廊下では古木が腕を組んで待っていた。不機嫌な感じには見えなかった。ふりをしているのは話をしている相手に心を許しているからであると思った。古木の歩き方は相手に歩幅を合わしているようだ。それが定義のように思えた。

「そういえば、言い忘れていたな。本、有難うな。」

「あれは水沢さんに頼まれたんです。遠藤博信の作品を買ってこいって言われたので・・・。従ったまでです。」

「けど、作品名を言っていないことをするとお前の勘は当たっているってことだ。警察でもあたるだろうな。」

落ち着いたように見えるがうれしいのがかすかに映っている。部下だとか上下関係は必要最低限としか思ってないのだろうから。車に乗るときに何時ものように音楽をかけだした。音量が小さくてもいい曲だと思ったのだ。

「いいですね。落ち着きます。」

「本当はいけないんだけどな。上が許可してくれてるんだ。抵抗することなく受け入れたまでだ。曲は光からの買いかぶりだ。家で何時も聞いているからそれを受け取ったんだ。」

「そうなんですね。」

光からの買いかぶりとか言っているが、男性グループの声と歌詞があっているのでファンと変わらないのではと思ってしまう。言えないことはないが、いうのは何処か憚れてしまうのだ。ルンルンとして運転をしている姿からは問題を抱えているのは嘘のようにならない。作り話をする必要がないことも理解の上なのだが・・・。世の中を見ていると嘘をつくことが定番になっている。過保護をしているのはしょせん自分自身なのだろうと思った。やめれば問われないという習慣を生み出して逃げている。そう思って仕方がない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ