本の絵
警視庁へと戻ると水沢はまるきっり作り笑顔を出していた。疑問に思う人間は少ないのだろうと思った。市橋は小寺と渡辺に会った。疲れ切った表情はしているが何処か凛と張った顔も隠れている。
「家庭教師について調べていますが、江藤という人間がどう情報が漏れたのかと思っているようです。サークルだといわれていますが認めれば大学の信用問題にかかわるといって相手にしてくれません。」
渡辺の嘆きに似た声が聞こえた。サークルからだとしても認めないと進めないものにあふれ切ってしまっている。意地でも認めないのであれば殺人事件を放っておくのが適任だと思っているのだろう。
「広報でも誰でもいい。殺人の犯人を見逃して新たな殺人を作り上げたときに責任とれるのかといったら食い下がるよ。困ったものだろう。何処の責任で誰かが殺されたと問われたら。」
「そうですね。攻撃としては最適ですね。水沢さん。」
小寺は感心するようにうなずいている。ひたすらうなずいて気が済んだのかコーヒーを飲みだした。一連の動作に無駄がない。小寺もきっと鍛えられたのだろうから。今更信用問題と嘆きを売ったところで誰が養護するのだろうか。救いようのない言葉を吐くだけで信頼が生まれないのだろうと思った。
「市橋、班長の容態は?」
「大丈夫ですよ。回復しています。そろそろ退院といったところだと見えました。」
「そうか。」
小寺はため息をついて自分の机に座った。渡辺はソファで寝そべって寝ている。機能を停止したロボットのようだ。
「皆川さんの周辺を探ることも加えようと思っています。江藤の同じサークルに皆川卓がいたのは事実ですから。」
「共同のサークルか。そこなら聞いたことを語ることは不可能とは言い切れないな。いまだにねたみ嫉みを探っているほかの班は考えていないのかもな。泡沫が生まれている理由も・・・。」
行方不明者を探るのには手間がかかるがそれで終わるとは思っていない。有名作家の孫がかかわっているのでは疑われるのであればマスコミは喜んで食いつくのが目に見えている。だから、容易垂れ流すのはよしたほうがいいのだ。
「家庭教師を割り出すのにかけてくれ。古木も加わるから強いと思う。皆川に会うにはあいつの関係者じゃないと認めないというのがあるからな。別に警察を拒んでいるわけじゃないから上も大きな声では言えないんだろうよ。任意で引っ張っても答えないじゃ意味がなさないからさ。」
警察も打つ手を探っているのだろう。