気持ちの炎
水沢が気が済むまで話し終わると一止と誠治と遊んでほしいと古木からの願いででもあったため、2人と共に遊ぶことにした。光もちょうど見舞いに来ていたこともあって気晴らしに眺めることになったのだ。ベンチに水沢と光が座った。その向かいではサッカーをしている。病院で遊んで邪魔にならないようにという配慮だ。
「どうだ。あいつはいまだに考えているのか?」
「えぇ、自分の部屋に紐とか見つかるときは処分しているの。時々しか行かないけどね。まだ恨んでいるの。」
光はそばで見守っているがなおも変わらない考えに無力に感じてしまうのだろう。先ほど買った缶コーヒーを飲み干した。缶の飲み口には口紅がうっすらついていた。
「刃物は好んでいないんだろ。あの事件以来からトラウマなのか嫌っているんだろうな。」
「ないわ。私は今も思い出すの。私の声であの人が泣き出した姿が見てられなかったからね。今、使っている部屋はあの人の元自分の部屋でかつて自殺未遂の未遂になった場所。上を見れば残っているの。切ったけど、少し白いのが残っているの。見ると思い出すの。・・・・もう、傷つけないでほしいって。」
「自殺か。止められればいい。そう思っているよ。今も同僚になれてうれしいけど、班が違うから。」
彼の言葉は重いものだった。つらい記憶も強要されている。守りたいのは幸せになっているのだ。家族をもっていたのだ。
「詩郎さんのことは協力しないと無理なのは知っているわ。事件も十字架も消えていないの。たまに、思い出すことになるのだろうから。」
2人の息子を見つめる彼女の瞳は優しくも寂しさをたたえていた。夫を救いたいという希望を考えているのだろう。下を向いたときの手は力強く握られていた。
「抱えすぎないでよ。俺も相談に乗るからさ。あいつの笑顔をまた見たいんだ。戸惑った顔しか見えていないからな。」
彼女も抱えてしまうのだろう。自分しかいないのだと。無茶をすることが全てではない。それは知っているはずだ。彼女の昔勤めていた会社は今はもうない。圧力でしか示すことしかできなかった内部で反乱がおきたのだ。表はいいが、中は穢れ切っていた。反乱がおきたのは彼女が辞めてからだ。『最初からミスをしている会社は圧力を神だとあがめている』といってやめたのだ。言葉が強かったのだろう。ついていこうと思える人間の集めるのだろうか。それか権力を行使に意味をもっているのだろうかと思えたのだ。