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陽炎と泡沫  作者: 実嵐
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愚か者の持論

水沢は市橋の問いにキチンと答えた。彼は答え終わった後、少し気張ったのか疲れをとるためか伸びをした。市橋の顔をじっと見つめた。

「なんですか?」

「あいつの実家に行かないか?調べていたものを探れば狙われた理由もわかるものだ。それに古木と一緒に行動していたのなら個人行動を許していないってことだ。」

水沢の弁解の余地のいらない言葉にうなずくしかない。捜査一課にいてよかったのかと無駄だと問われてる自問自答を続けている。無論、答えが出るのなら闇に陥ることもないというものだ。そんなことを思っているうちに水沢は着々と準備している。

「2人にな、市橋を借りてるって伝えておいてくれ。」

「わかりました。古木さんの早い回復を望みます。」

「そうだな。あいつは大丈夫だ。」

隣の班なのに心配をしているのが不思議な感覚しかなかった。車に乗ることなく徒歩で行ける距離なのだろう。それか気晴らしに近いのか。何処かとぼとぼ歩いているように見えた。

「古木のこと、ほとんど知らなかっただろう。来たばかりでこんな目にあわされて迷惑だと思ったか?」

「いいえ、そんなことは思いません。優しいことで苦しむことが多かったのかなと思うんです。出世なんてものに興味がない分でしょうか?」

市橋の純粋の問いに優しくも何処か心配そうな笑みを見せる。

「出世にもともと興味はなかった。制服警官のころからさ。本当は警察をやめると決意していた年に起きてしまってやめれなかった。親父が本に興味ない奴と本の対話をするのが嫌だったというのが理由でなっただけ。・・・まぁ、こんなことを迷惑でないといっただけ評価するよ。1回は経験してさ、こんなことに巻き込まれたくないといって最初のほうはやめて行った。そのうち、出世すれば逃れることを知って出世をするようになって今や出世できる班だってさ。くだらない。」

事件を解決に専念するのは小寺と渡辺くらいになっていた。それを知った水沢は落胆したのだ。張本人の古木は悲しいむなしい笑みをたたえていたのだ。

「あいつはな、構わないって。迷惑だと思っているのならそばにいられるほうが余計迷惑だって。」

「邪魔って言っているみたいですね。」

「もろ邪魔って言っているんだよ。事件を解決しろって。一人前に手柄だけを欲するのは情けない大人の恥を見せびらかしているの同然だって。」

情けないと評価されていることも本人はわからないのだから。愚かで卑怯であるのだ。救えない。


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