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陽炎と泡沫  作者: 実嵐
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幻想世界

市橋は何となく古木に同情していた。光から話が終わった後、小寺と水沢はかえって行った。小寺は一瞥しただけであったが気が済むまでいて大丈夫だということなのだろう。光は病室に行って古木と子供たちの様子を見ているが、市橋がいるためか休憩室にいた。

「気を使わなくても大丈夫ですよ。」

「貴方は詩郎さんの班にいるのですか?」

窓際の月あかりに照らされて神秘的になっていた。光には落ち込んで疲れてしまっているのもわかっている。

「はい、新入りの市橋といいます。挨拶するタイミングを全て逃してしまって申し訳ありません。」

慌てて彼が謝ると光は微笑んでいた。文雄は子供たちを寝かした後に帰ったのだろう。姿は見ていない。配慮が良すぎて驚いてしまう。

「いいのよ。よく変わっているから。全員知っているわけじゃないし・・・。最初はお荷物班だったのに今や重要な班になるなんて思わなかったな。」

彼女の独り言に満ちた言葉はお荷物ということだった。

「お荷物ってどういうことですか?」

「詩郎さん、自殺未遂の未遂をしたこともあってね。警察やめようとしていたの。そしたら警視庁に来いっていう辞令を受けて行ったら班を持つことになったの。集まったメンバーは訳ありばかり。その中で慕ってくれたのが小寺さんと渡辺さん。やめたり、最近じゃ出世を優先する人達ばかりだから・・・。

貴方も好きなことをすればいいと思っているの。」

有象無象の噂に頼っていたら疲れるから素知らぬふりをしていたのだろう。古木が自分自身に受けていたことも含めていたのだ。ありもしない噂を立てて詭弁であるが押し通すことが世の中ではやっていたりするのだ。他人に責任を押し付けて逃げるだけ。それを促進する組織があるというだけで同情の余地はないだろう。守っているつもりが壊していることも気づかない愚か者たちに問うとまでは言えないのが心情だ。

「警視庁で班ができたときって班長は見知らぬ噂があったんですか?」

「あったわよ。交番でぼやいた話が本人がいない間に1人歩きするの。口から出たら世の中って感じ。そういうこともあってかしら。部下になる人の評価なんか興味がないの。そんなの気にしていたら事件が解決するかしらね。手柄やらつまらない争いはもっぱらごめんよ。」

古木が嫌うことは光も嫌いなのだろう。他人の評価で事件が解決するなんて言うのは幻想なのだ。古木が大切にしているのは部下の意見や勘であったりするのだろう。


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