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陽炎と泡沫  作者: 実嵐
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清算されたものとミス

斎藤達郎または皆川実継の自宅を訪れたときに何処か違和感があったのだろう。家族が狙われているのだと。

「班長は何時気づいていたと思いますか?」

「あの人のことだからうすうすね。いくら古本屋を探ってみても見つからないことに加えて大型じゃなくても本やに行ってなかったらプレミアムの品とか考えただろうからね。」

光はぽつぽつと話している。それしかできなかったのだろう。廊下に別の靴の音が鳴っていた。振り返ってみるとやせ型の男性が立っていた。隣には子供が2人、眠そうに目をこすっている。

「文雄さん。どうして・・・。」

「どうしてって一止と誠治が詩郎のそばがいいって言ったからな。風呂も入れてるし、寝るくらいならいいかなと思ってな。光ちゃんも同じだろう。泊まるつもりだろうからな。」

「じゃあ・・・。」

「いいよ。話しておきなよ。俺は隣で眺めておくだけだから遅くなっても構わないから。」

一止と誠治は子供らしくはしゃぐ力は残っていないのだろう。少しばかり引きずられているようになっていた。

「犯人はわからなくともわかっていたってことだね。手術が終わった時にベッドを殴っていて知ったんだよ。自殺とはいかないまでも近いことをしていたことをね。」

「交番にいたときのことがいまだに・・・。」

「晴れるわけないよな。いくら遺族が謝ったって。というよりあってないんだよな。いまだにあれ以来あってならないと思っているから。」

光はそこから少し救ったのだと水沢は付け加えた。書店での出会いの後、図書館であったのだという。その時に食事に誘ったのは光であったのだ。翳りのある顔の理由が一向にわからなかったうえに語らなかった。回数を重ねていくごとに信頼へとつながったのか語ったのだ。同じ交番の人間の死んだところを見たうえに共犯のように思われているのだと。そこから同情というより翳りが消えないことを不安に思ったのだ。

「何回か食事であってアドレスを交換していたのよ。それもあって彼の自殺未遂の時に文雄さんが呼んでくれたの。行ったときには誰とも口を利かなかったのに私には効いたということあってね。付き合うように言ってくれないかって。」

その時の文雄の表情は真剣だった。此処のままだと何時か死ぬかもしれない。だから止めてくれと。傷が治って少ししたときに食事に行った。何時もと変わらない場所で付き合ってほしいというと詩郎は困惑していた。考えさせてほしいと。他に好きな人がいるのではない。恵まれていいのだろうかと悩んだのだ。次の食事の時に前のこたえを言っていなかったといってはいと言った。はっきりとした言葉だった。そこから結婚したのだ。子供が生まれる度に苦しんでいるのか、徐々に笑顔はなくなった。そして今回に至ったのだ。

「でも、よかったわ。詩郎さんも考え直さないとね。他人の命を重んじて自分の命を軽く思うのは間違いであると伝えられるわ。」

落ち込んでいた姿から話して吹っ切れたのか愛らしい笑顔をにじませていた。それは誰でもない。古木詩郎に向けたものなのだ。


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