ことの事実
病室の前につくと目を腫らした女性とむっくりと顔を膨らした水沢が立っていた。水沢に至っては何に怒っているのだろうか。
「遅れてすいません。」
「気晴らしに酒を飲んでいたことで怒らない。あいつに会ってから話したいことがあるから早く会ってこい。眠っているから起こすなよ。」
釘をさすように水沢は言った。渡辺は何処に行ったのだろうか。
「あのー、小寺さん。渡辺さんは何処に行ったんですか?」
「帰ったよ。様子を見たってこともあって安心してな。事件を調べないといけないし、顔を出すって言っているから心配をしているんだろうから。」
何も心配をするのも違うような気がしてならなかった。小寺は優先的に落ち着いていた。ドアを開けたのだ。4人部屋の窓側にいる。そばによると何もなかったように眠っていた。
「落ち着いてますね。」
「俺が来た時は驚いたよ。喧嘩をしていたんだよ。光ちゃんとね。まぁ、内容を知れば嫌でも思うさ。端的だけど水沢さんが話したことだよ。さあ、出よう。」
窓の外見つめた。ネオンに染められて何かにおぼれて見えなくなってしまったのだろうか。
「ほら、行くよ。班長は大丈夫だから。」
催促のように言われてうなずいて病室のドアを開けた。エレベーターの近くにある休憩室に集まっていた。自動販売機の騒音を鳴らしてた。周りが騒がしければ気にならないが静かすぎるとノイズと変わる。
「きてくれた。コーヒーがあるから。」
「すいません。」
椅子に座りながら謝った。こんなに遅くなったのは市橋の所為であると思っているからだ。それは背に腹は代えられない。
「光ちゃん、一止と誠治は大丈夫なのか?」
「明日も学校を休むといって聞かないので休むつもり。あの人のそばにいられるときくらいはいたいみたいなの。わがままだとか言っても私はいいと思っているのはエゴかな。」
「そんなことないよ。やりたいことをさせておくのがいい。」
小寺の何処か寂しそうな笑みを見せながらうなずいていたうえに応えていた。水沢はコーヒーの件が終えて以来一向に声を上げない。
「それで話して。」
「あいつは実家に戻って強盗を待っていた可能性がある。斎藤達郎の自宅に行ける人間だと知ってぞっとしたのだろう。真実を知られては困ると思って追ってきた可能性がある。」
「それで詩郎さんは強盗を使って死ぬことを選ぼうとしたの。私は気づかなかった。・・・嫌になる。」
光が言った最後の言葉の小さくも重い言葉が発せられた。