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陽炎と泡沫  作者: 実嵐
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ロード

心配そうにいまだに市橋を見つめている渡辺は何か思いついたのかソファから離れた。小寺は資料を見ながらも気にしている様子がうかがえる。新入りだからと甘やかすという感じはないが、キチンと仲間として認められているのは肌で感じられる。制服警官にあこがれていたが、今は此処なら刑事をやっていいと思えるようになった。たった数日いての話だが・・・。先走っているだけでとか思うところが多い。市橋があくびをかみ殺していると何処かへ行っていた渡辺がお盆にコーヒーを3つ乗っけていた。小寺に渡した後、渡辺パソコンを覗きながら言った。

「結構、新しいことをして疲れたのなら帰ったほうがいいぞ。時間もたっている。明日だってできる。」

「でも・・・。」

「早期解決と意気込んでも必ずそう行くとは限らないからな。・・・歓迎会をしたいのはやまやまなんだけど、今回の事件が終わったら班長がするんじゃないのか。なぁ、小寺。」

優しい渡辺の気遣いが見える言葉だった。小寺も声をかけられると首を縦に動かした。こき使ってせかして間違いを犯しては元も子もない話なのだ。

「じゃあ、俺今日帰ります。」

「せめて飲んでけよ。俺はうまく注げないけど、班長のコーヒーはうまいんだぜ。」

自慢げに語る渡辺やそれを満面の笑みで見つめている小寺を見ていると誇らしい班長なのだと思った。2人は有象無象の噂で此処にやって来たのだと古木は言っていた。それを気にしたところで事件は解決しないとも。正論に満ちている。彼らを一瞥した後にコーヒーを飲んだ。疲れ切ったからだにしみこんでいった。少し間を取って帰る準備をした。

「新入りは帰るのか?」

水沢の声がした。嫌味を言っているのではなく、状況を言っているだけに映った。嫌味を言うのは好きではないのだろう。

「そうですよ。斎藤の自宅にも訪れているんですから。慣れないうちに気張るやり方を無理にさせるのは班長、嫌いですからね。慣れるまで好きなことをさせたり、ついていかせたりするんですから。」

気張るやり方を嫌うのだと小寺は当然のように言った。古木の行動は自由に見えて何処かで決定的な証拠を探しているように見えた。

「何となく刑事というものが見えたか?」

「はい、一概に制服警官がいいなどと吐いていた自分を恨みますよ。班長を見ていると尊敬します。何故、出世する班なのかいまだにわからないですけど・・・。」

「徐々にわかってくるさ。急いで躓いてしまったら意味ないからな。」

「わかってます。班長の行動を見ていてわかりました。」

そう市橋が告げると嬉しそうに水沢は笑った。小寺と渡辺もつられて笑っていた。


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