アドバイスのこと?
古木は斎藤の自宅に訪れる前に書店へと向かった。声をかけると頼まれごとだとしか言わなかった。数分しかたってないのにビニール袋をもっていた。ビニールの袋からかすかに見えている紙のブックカバーをつけていた。書店の名前が堂々とあったのだ。
「早いですね。本を探すのに時間がかかるでしょう。」
「かからない。大体の場所を覚えていればな。それに置いている場所が変わったら書店員に聞けばいい。
」
「いいですね。大切ですよね。」
今の書店では検索機があって簡単に調べることができるのだ。けれど、わからないときに忙しそうにかけている書店員に声をかけるのに躊躇してしまうものだ。それができるのは関係やもっているものなのだろうと市橋は心底思った。車に乗り込んだ運転するのはもっぱら市橋ではなく古木なのだが、嫌がる様子もない。
「斎藤達郎っていう人がどんな人か想像がつかないんです。写真を出さないじゃないですか。いくつなのかとか愚問が浮かぶばかりです。」
「それで構わないよ。気になることを聞く。それが刑事ってやつだ。愚問がいい質問だったことだってある。全てを必要ないと否定することなんておこがましくてできないさ。価値観の問題だろうとな。」
市橋は忘れがちな心を正してくれているように思った。世の中に流され情報に左右させられ無我夢中でやっていくのがやっとでシンプルな単純なことを忘れるのだ。真実に蓋をしておきながらうんざりだなどといっている政治家がいるが、行いと言葉も矛盾の塊の着飾った奴が偉そうにいうのだ。早く言えば済む話を伸ばしたのは守ろうと奮闘してバグっているのと変わらない。本末転倒を簡単にやってのけるのだ。生き様が卑しいのが丸見えなのだ。欲望しか残っていないのだろう。悪いことをしたという反省をしないのだから。
「市橋、考え込むのは勝手だが、お経のように唱えるのはやめてくれ。気が散るかも。」
「本当、どっちなんですか。それになんでカモとかつけるんですか。曖昧にしないではっきり言ってくださいよ。」
市橋が愚痴を吐くように言っていると古木の太陽のような笑い声が車の中で響いた。その中でため息をしても罪はない。むしろ、すがすがしいくらいの威力を持つ。
「俺は噂やらそういう行動やらはあまり気にしないの。だって何時かは役に立つことがあるだろう。それを奪ったら嫌だからな。小寺だって最初来た時は噂でうなされていたんだから。それを言ったら渡辺も同じか。俺は興味なかった。班ができたばかりで無駄な責任とやらに押しつぶされそうだったから。逆に効果を出すんだから人間ってのはわからないよ。」