心情
渡辺の挨拶を終えた後に少しの間が生まれた。此処ではきっと彼は問題児なのだろうと思った。小寺が組むのはきっということを利かすためであると思う。市橋は段ボールに入っているものを出した。全く面白くないものばかりが出てくる。
「市橋君は渡辺が苦手か?」
「どうしてそんなことを言うんですか?」
メンバーを見ながら言っている古木に問うしかなかった。感情が表に出すぎているのを注意しているのだろうか。そんなことを思っても彼にしかわからない。
「彼の挨拶を快く思っていなかっただろう。けど、此処では普通なんだ。小寺も訳ありみたいなタグをつけられて此処に来ることになったんだ。本当は嘘を言って変なレッテルつけられているだけでそれを知っているからということ。君も制服警官のほうがよかったんだろう。知ってるよ。」
古木班は問題児を引き取って問題を起こさせてやめさせるのが目的と知ってあったのだろう。それを裏返しにして成果を上げていることに抵抗できないのだろう。
「小寺、いつもの店を予約しておいてくれ。事件がなければ行くといってな。大将には世話になっているのに恩を返せていないよ。」
「わかりました。感謝を伝えておきます。班長のことを気にしているんですからね。」
子供に注意するように言った。小寺の笑顔を見せている。渡辺は本当に寝てしまっているのだろう。寝息を立てながら狭いソファをうろうろしていた。古木は親のように上着をかけていた。班員を守ることを大切にしているのだろう。古木の電話が鳴った。
「もしもし。」
「今日は来るのか?」
「なんだ。兄貴か。事件が起きなければね。親父はどうしてんだ?」
「出版社の依頼を受けているから出かけてるよ。売れる作家の見極めを教えてるんだってさ。お前を欲しがっているっていつも聞かされる。」
声の主は兄の文雄だった。実家である古木古書店の跡継ぎだ。今もまだ道治がしている。出版社とのかかわりを教えているのだ。
「それはお互い様だろ。じゃあ切るよ。」
「お兄さんですか。普段から連絡が来るなんて仲がいいですね。」
古木は照れ臭くなって頭を掻いてる。普通のことを指摘されるのは苦手なのだろう。
「欲しがっているといってたじゃないんですか?あれなんですか。」
疑問をすぐに聞きたがるのは刑事になるのはいいのだろうが、踏み込みすぎると人は避けていくのだ。
「市橋、そこまでにしときな。いずれわかるから。」
渡辺の声がした。幾分、過ごした時間には勝てると思ってはいない。従うことにした。