表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陽炎と泡沫  作者: 実嵐
19/109

価値観に対して

詩郎にいってやれる最大限の言葉など存在しなかった。下手な慰めをしたところで何を伝えることができるのだろうか。エゴとの葛藤していても自問自答を繰り返すだけで意味を成してくるとは考えていない。光の声にこたえてくれる。ただそのことだけでかまわなかった。

「事件はどう?解決しそう?」

「しなくちゃね。世間では悪くてもしなくちゃいけないから。」

「本を読んでいたからそれに関係することよね。駄作がまさかここで役に立つとはね。」

駄作というのは斉藤の個人の意見なのだ。それに対して攻撃をする人もいるだろう。他人の価値観に入り込んでしまわないといけないという人が・・・。道治はその駄作が面白かったこともあって名を変えて少し変化をつけて売るように志願していた。その本は何万部というほどに売れたのだ。ただでさえ売れないといわれている時代に売ったのだ。光はそれを近くで見ていることもあって多くはいえない。

「仕事は順調かい。エッセイの仕事をよくもらえたな。親父も。」

「一応簡単なのを書いて見せてみたら面白いっていってもらえてそれからエッセイの仕事が何本かあるの。少しの安定はあるでしょ。」

エッセイの仕事がもらえるように道治に教えてもらったのだ。ど素人にかける範囲なんて決まってきてしまう。それを避けたがっていた。道治は型破りというタイプではない。かといってはまりぱなしというわけでもない。作家に合わせた対応するので作家には安心をもたらすタイプであるのは間違いなのだ。

「こっちのことは安心してくれればいいから。集中しないといけないことが積み重なって壊れたらいやなんだからね。」

「兄貴からか。」

「違うわよ。妻としての言葉よ。文雄さんも貴方も優しすぎるの。わかってないだけで・・・。」

嘯いた態度をとってもかまわなかったができなかった。父親であることも自覚しているだろう。前を向いて歩き出しているときに障害物に出会うととまってしまう可能性を詩郎はもっている。立ち止まることはいいことだが、とまりすぎて判断ミスを犯す可能性もついている。付きまとっているのだ。

「たまにはこういう日もできたらいいのにな。忙しいってことはいいことだけどそれだけ何かを割いているんだからな。」

「気にしないの。こうなるのはわかっていた話でしょ。制服警官から刑事に上がれたのは実力があったの。そう思っていたほうが楽でしょ。外で靴を削っているのも性に合わないって言うのならやめたら事件が終わったらっていう条件つきでね。中途半端は許さないわよ。」

手厳しい言葉ではない。暖かい言葉をあふれている。それにあの日まで気づくことができなかったのは不覚の事態であったのだ。それを堂々と教えてくれる人がそばにいるのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ