提案
光は彼に会った数日後、再び会うことになった。それは彼を探すために書店や図書館をうろうろするようになっていた。日課になっていることを同僚に伝えるとバカだといわれた。運命の信者かとまで罵倒されたが、そうだと簡単にうなずけるものではなかった。図書館に行ったときだった。何となく読みたいと思った本を数冊胸に抱えていた。とぼとぼと席が空いているところを探っている。
「あのー、以前話しましたよね。」
彼の顔を上げた表情が正面で直視するにはあまりにも暗すぎた。彼女の心情をわかっていないのだろう。くらいほほえみを感じているのだ。
「そうですね。よく此処に来るんですか?」
「まぁ、最近は・・・。そうです。食事に行きませんか?此処から近いいいお店を知っているんです。」
「意外ですね。前は乗り気ではなかったのに・・・。」
ぶつぶつという声は前あった時より生気がなかった。それを見たのに助けられないのかと思う。彼の片手には本を握ている。
「構いません。貴方のことが知りたくなっただけです。」
「貴方は知ってますか?言葉って単純でシンプルでありながら残酷な力を持つということを。俺は知ってます。数年前に教えられました。」
そういうと本を決まった棚に置いた。彼は光の本も当然のように置いた。
隣に歩く彼は居心地が悪そうにしていた。光の心の中は無論問われないことと思っていない。近くの派手ではないこじんまりとした店に入った。特別珍しい料理はない。彼はその中で安いものだった。光は平均的なものを頼んだ。
「貴方の名前はなんというのですか?」
「古木です。古木詩郎です。」
「私は片島光です。よろしくお願いします。」
「もう会わないと思ってましたよ。」
彼の声には含みを言っていた。不自然なほど幸せというものを選んではいなかったのだ。料理が来ても淡々と食べている。
「仕事は何をしているんですか?」
「警察です。どこぞの交番で仕事をしているんです。刑事に昇格されるといわれてうれしくないんです。」
「どうしてですか?」
「俺は同期が殺されるのを目の前で見ました。たまたま応援に呼ばれてタイミング的に起きてしまったんです。それをその人の遺族は俺の責任だとののしったんです。毎年命日に行っても許されるはずじゃないのになんですかね。」
彼には目の前の死を見たのだ。応援で呼ばれていて行っただけ。タイミングだけなのに救いを求めず抱え込んでいたのだ。
「なら、吐き出し口として私と会って話しましょう。」