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陽炎と泡沫  作者: 実嵐
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取次

古木と市橋は現場に着いた。市橋は何度訪れても戸惑ってしまう。こんなのを慣れろというのが困る。頭を垂らすように下しか見ていなかった。

「そんなじゃあ見落とすぞ。いくら被害者が憎まれ者でも殺人に会った人間だ。単純であればいい。深く考えるな。」

「はい。でも、よく此処に来て真っ先に火元を見るんですね。」

「いやーさっきな。メールがあったんだ。小寺からな。泡沫があったって話があったからな。」

すらすらと思ったことを言う姿は恐れることがない。古木は泡沫と告げたことに意味など含めていないのだろう。癖に近いものなのだろう。メールがあったというのは車を降りる時に電話の着信音を聞き逃さなかった。

「その・・・泡沫というのは?」

「そうか、教えてなかったな。行方不明者のことだよ。泡沫といったほうが伝達には早いうえに確か和歌で泡沫人といって人のはかなさをうたっているんだ。そこから拝借したまでさ。」

悪びれぬ姿を問うのをためらうほどのものだった。市橋は家の隅を覗いている。そこに何かあるという確信はない。写真だけじゃわからないのだ。映らない死角というのは何処でも存在する。それを確認したいだけなのだ。

「泡沫っていったい誰なんですか?家系図にはなかったですよね。」

「家庭教師だ。大学生のな。・・・そういえばそんな話があったな。」

古木は重むろに携帯を取り出した。ラフな格好からメモが出てきた。ペラペラと軽快な音を鳴らしながら見ている。何が書かれているのだろうか。こぼれた声を盗み聞きした。

「兄貴、斎藤達郎の炎火を用意して待っていてくれ。親父から拝借してくれよ。好きな作家であり育ての親みたいなものだろうがな。頼んだぜ。事件のためだと坑口を使ってな。」

電話を切るとメモもしまいこんでしまった。斎藤達郎とは幾度となく賞を取り知る人ぞとか言う人物ではない。知って当たり前という人物を作り上げたのは彼の親父だといっている。

「さっきの話って本当ですか?斎藤達郎の育ての親は貴方の親父さんって。」

「小説はな。親父は出版社の編集者から編集長へとなった時にはヘッドハンティングをされるまでの腕をもっている。それを嫌がった社長は校閲を頼んだんだ。嫌だった親父は古書店を開いた。繁盛もののな。」

「その時に扱った人ということですか?」

「いや、今もしてるよ。フリーの編集者としていろんな出版社から声がかかりまくりさ。俺や兄貴も同じなんだ。子供たちの腕を知っているからな。大手のほしがっているが俺たちの希望は古書店を継ぐってことさ。」


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