小さな帝国
卓は安西に計画を打ち明けた。祖父が友人にだけに渡した小説があるが、古本屋を営んでおりそこで売られているのから買えば疑われることも少なくなる。ただ、そこから派生した話があるために少しでも判断を間違えるとその小説へとすり替わってしまうのだといった。
「ねちねちと小細工をする国会議員って嫌いなのよね。ろくに判断しないじゃない。うまいこと言いくるめているだけよ。自慢話をしているのと変わらないわ。どうせ2世とかのレンタルされた光の癖に。」
「苦しめるだけだよ。殺人は犯したくないから。」
「けれど、貴方を追ってくる可能性は高いわよ。それでもかまわないというの。最終的には脅されて狭い暮らしをするくらいなら逃げ切れるくらいのものがしたいわ。」
殺人を提案したのは卓ではないのだ。湯浅という国会議員の悪事を見破った週刊誌の記者が死んだという噂を家政婦の紹介所で聞いたのだ。近くで雇われていたらしく周りの人は逃げるようにいなくなったのだ。本当のことを明かさず、英雄気取りには毎回うんざりしてしまう。他人が作用していたとしても自分の手柄にしてしまうのは愚かさを見せているようであるのだ。せこい考えを大きな声を出してまですることなどだろうか問うことも愚かだというのならいったい何が愚問であるかを示してほしいのだ。
「それじゃあ・・・炎火という作品にしませんか?殺される被害者が国会議員。それも他人から常に恨まれる人なんです。そのままじゃないですか。」
「そうね。それにしましょう。」
戸惑うことなどなかった。それは以前家政婦とついていた時に湯浅信三の妻、恵理子にひどい目に遭ったのだ。食事を出せば口に合わないだの言って高い金を出して人がいるところで食べたのだ。高ければいいという容易な考えが人を傷つけたのだ。それに加え掃除、洗濯、アイロンなど全てを他人がするのに子供の世話より不倫をするほどの人間だったのだ。それが週刊誌に乗るらしいと知った彼女は黒い団体に金で雇って解決したのだ。それゆえ、テレビでも疑問を投げ駆られていたのだ。夫はそのために失言を繰り返した。それも本人には全くわからなかったのだろう。世間に敵を増やしただけだったのだ。世間から恨まれるようになると家政婦に当たるという八つ当たりをしたのだ。いくら金がよくてもついていかないと思って雇われを断ったのだ。
「貴方なんてね。しょせん、底辺にいるんだから感謝しなさい。此処は帝国なのよ。」
「そんなものは今は存在しません。理解してください。」