会話を生んだ
卓がちょうど不満を抱えているときに思い出したのだ。昔よく聞いた話があった。偉大な祖父から聞かされたものであった。小学生、中学生の時にいじめに遭っていた。その時に主犯格であった奴が万引きを強要していたにも関わってもいないうえに関与もなかったと言い出したのだ。父親が国会議員であったことを筆頭にしてもみ消したのだ。誰にも知らぬ作品があるのだろうから。祖父に聞きたいのだが、大学で忙しいのだろうから。
「いじめていたのは湯浅といってね。今や国会議員になって嘘を振りまいている人だよ。もう聞き飽きた声と真実を突き止められると焦って少し高い声になることも知っているよ。」
「おじいちゃんは強要されたってこと、その時言わなかったの?」
「言わなかった。聞く耳を持たないことくらい感じていたさ。それを論破したところで嫌気がさす。金持ちにはいい遊びが思いつかないのだと思わなかったのだ。」
卓は聞いたことを思い出す度に身震いを起こした。何時か殺さなければと思った。だが、すぐに行ってしまうのは危険だと思い、祖父のお手伝いをしている安西という人に話をしてみることにした。止められたならそれまでだし、実行するかどうかは悩むべきなのだ。専門学校も見つけていないのに大学もろくにかかわっていないのだから大丈夫だろう。数日後にリビングで話すことにした。深く話すのは初めてだった。祖父の付き人のようにも思えてならなかったからだ。
「卓君って言ったけ?初めて話すわね。何時もすぐに斎藤さんのところへといってしまうから。」
「すいません。」
「いいの。挨拶を返してくれたりするのは少なくなっているからね。どうしたの?」
優しく問いかけてくれたのはうれしかった。彼女は息子を殺されたのだといったのだ。勘違いで傷つけてしまったので謝罪をしたいのだが、会うことができずに今のままでいるのだと。後悔ばかりだといっていた。
「湯浅っていう国会議員知ってますか?」
「あぁ、知ってるわ。テレビで話題になっているからね。昔はやんちゃしていたと週刊誌に書かれていたけど・・・。」
「そうです。おじいちゃんに万引きを強要しておいた上にいじめを行い、自分の都合が悪くなると逃げたんです。今や国会議員となって嘘を言っているなんてどう思います?」
「貴方、何を考えているの?」
安西の何処か察しのついたような声で聞こえたのだ。聞く耳を持つタイプよりなだめるだけに過ぎないおだろうと。
「いいわよ。好きなだけ話なさい。何を考えているのかも知りたいわ。」