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陽炎と泡沫  作者: 実嵐
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時の計らい

廊下から騒がしい音が響いた。それは誰かの怒鳴り声も含まれていないのだ。

「令状取ってきました。今から行きましょう。」

「渡辺、まずな息整えろ。急いでもそうホシは逃げない。特に今回に限ってはな。コーヒー飲んでさ。落ち着け。」

コーヒーを作って机に置いた。見ているのにふさわしい光景であろう。捜査会議に行けば的外れのことを言っているのにわからず、見切り発車をするのだ。冤罪を生んでしまう容認を見つけてしまっているような気がする。あらゆる方向性を考えているというのは相手を安心されるための謳い文句なのだろう。考える余地もないのだろうから。

「落ち着きました。行きましょう。」

「そうだな。」

「場所は何処ですか?」

古木が放った言葉はあまりにも想定外の場所であった。そこに行けば会えるのだと確信しているのだ。市橋も驚いたが一番驚いていたのは水沢であったのかもしれない。つじつまが合っているような気がしてならないのだろうから。

「それじゃあ車で行くしかない場所だな。用意できているから行くか。」

2台の車に乗り込んだ。1台は古木班全員だ。古木、小寺、渡辺、市橋だ。もう1台は水沢のみだ。何時もそうだというのだ。班として抱えているのだからという理由らしい。無線から声が聞こえているが明らかに無視しているのが容易にわかる。古木班にはいつも通りのように曲が鳴っていた。運転しているのは市橋ではなく、小寺である。渡辺は手に令状をもっている。握りしめているといったほうが正しい。静かなように思えて心の中はかき乱されているのだろうから。古木に至ってはホシはある程度わかっていたのだ。理解していながら探していたと思うと痛むばかりだ。

「市橋、そう緊張するな。慌てなかったことからくみ取れることは、逃げることを惜しむような人間だというのではない。」

「そうですか。場所を聞いて驚いてしまって。そこからあまり思考回路が動かなくて。」

「最初はそういうものだよ。俺もな、がちがちだった時に班長がこわばったところで解決することも解決しなくなるといわれてな。納得したんだ。最初に行った場所に向かっているんだな。」

班に入る度に行くような場所なのだろう。慣れるために利用されていたのだ。渡辺のほうを見るとこぶしを作っていた。怒りなのか悲しみなのかわからないことばかりだ。言葉で対抗するにも言葉で現れないとわからないことがあるように思ったのだ。うなだれることを待つしかないのか。


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