野草
男は足元に生える七色に光輝く不思議な野草を手に取り、何気なく見つめた。野草の放つ光は美しく、初めて見る人の心をきっと魅了するだろう。遠くには、同じ野草が一面に生え、やはり美しく輝き広がっている。
数週間前、人類で初めて、たまたまこの野草を発見した男は、野草の研究に没頭した。野草に熱や放射線を加え反応を調べたり、すりつぶした野草に様々な薬品を混ぜた。
その結果、野草には風邪や肌荒れ、果ては癌といった命に関わる病気にまで効果がある事がわかった。
それだけでなく、味も美味で、一度口にすれば、その味を忘れる事はなかった。
万能な野草、これを商品化すれば、億万長者になるのは間違いないが、昨日に降り注いだ小型隕石の衝突で、推進エンジンと無線機が壊れた自身のロケットを見て、それが叶わぬ夢である事を、地球から遥か何光年も離れた名も知らぬ無人の星で男は悟った。