四話 情勢と確執
誤字脱字があれば感想にて御指摘下さい。
「ありがとう」
私が忠告に対してそう言うと狼はしばらく私を見つめていた。
「お主は他の”普人族”とは違って我等を人として扱うのだな」
「どういうこと?」
「ふむ、本当に知らないと見える。我等“獣人族”と”普人族”は今、敵対しておる」
「何故?」
「“普人族”が今、掲げておる普人族至上主義のせいでな」
「人族至上主義?」
「それも知らないのか。やはり記憶喪失というのは本当らしな」
「……記憶喪失?」
「はぁ……お主の戦闘プログラム? とやらから言伝を預かったときに本体? があの場に現れる前の記憶が一切ないと聞いておる。お主はあれか? 二重人格というやつか?」
「確かに記憶はないな。後、多分二重人格であっていると思う。で、普人族至上主義とは?」
「普人族至上主義とは、この世界において“普人族”が種族に置いて最上の種族というもので、それ以外の種族は最下であるため迫害するというものだが、実際に迫害されているのは“獣人族”・“妖精族”だけだ」
「他の種族は?」
「”魔人族”は元から見つけ次第処刑で、”龍人族”は強すぎて手がだせんからな」
私が狼と話していると集落の方から怒ったような声が聞こえた。
「族長! 何故“普人族”なんかといるのですか!」
声のした方向を見ると、そこには白色の二足歩行の狼がいた。
『対象に対して閲覧プログラムを起動しますか?』私は思考で同意した。
『閲覧プログラムを起動します』ウィンドウが出現し、そこにステータスが表示された。
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種族:“獣人族”(白狼族)
名前:アルヴァウス・ヴォルフ
性別:男性
状態:通常
魔力適性:低
魔力属性:風
存在の格:47
技術に対する補正:噛みつき67/100、引っ掻き54/100、体当たり77/100、見切り43/100、回避43/100、狩猟66/100
魔術に対する補正:|Reducere Resistentia Aeris《空気抵抗減少》、|Aer compressionem《空気圧縮》
※種族特性: 咬合力強化、爪牙強化、五感強化、獣化
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私がステータスを見ていると、狼……だとごちゃ混ぜになるな、アルヴァ……どちらもアルヴァだな、やはりアルヴァングでいいか、がこちらにやってきてウィンドウを覗き込んだ。
「はぁ。まぁいいか。だが、これは本当に便利だな」
アルヴァングはため息を吐いた後、ほめてきた。また何故かうれしくなった。
「族長!」
「落ち着け、アルヴァウス」
「これが落ち着いていられますか! “普人族”といるなんてあなたは氏族を裏切るおつもりか!」
「口が過ぎるぞアルヴァウス!! この者は他の”普人族”とは違う」
「“普人族”などどいつも一緒だ!」
「口が過ぎると言っているだろうがアルヴァウス!」
「何故そこまでそいつをかばうのですか族長」
「……我の娘だ」
「「は?」」
ナニイッテンダコイツ?
「冗談だ。だが落ち着いただろ?」
「はぁ。で、なぜ族長がそいつをかばうのか教えてもらえますか?」
「わからん」
「は? わからないとはどうゆうことですか」
「初めはこの者に負けたことがショックだったが「族長が負けたのですか!?」話を聞け、だがこの者と接していると、何故か守ってあげたくなったのだ。これが惚れたという事か」
「族長にも春が来たのですか」
「まぁそういうことだ」
「で、攫ってきたと」
「いや、それは違う。いや? 違わないのか?」
「はっきりとしませんね」
「まぁいい、この者は集落に住ませることにした」
「族長も知っている通り、この集落の者は”普人族”にあまりいい感情を持っていません。それでも住ませるのですか?」
「ああ、まぁ本人の意思を尊重するがな。で、どうする? あー、そういえば名前を聞いてなかったな」
「恋は盲目とはよく言ったものですね族長」
「うるさい。名前を教えてもらえるか?」
……名前か、どうしたものか。前世の名でも名乗るか?いや、もやがかかっているかのように思い出せないから無理か。うーん名前か。
「ホイヒラーだ」
ホイヒラー、ドイツ語で偽善者か、前世の私の行いにふさわしい名だな。
「いい名だな。で、どうする? どこか行く当てはあるのか?」
「ない。だから有難くその話を受けさせてもらいたい」
「先ほどの話を聞いていたと思うが、集落の者は”普人族”にあまりいい感情を持っていない。それでも暮らしていく覚悟はあるか? 良い関係を築くことができる覚悟があるか?」
「わからないが、できるだけ頑張るつもりだ」
「そうか。なら我はお主にできる限り力を貸そう。そういえば名乗ってなかったな、まぁ必要ないだろうが我の名はアルヴァング。この集落の族長をしている。隣にいるのが「アルヴァウスだ。族長の補佐をしている。」……」
「私はホイヒラー。記憶喪失で二重人格だけどよろしく頼む」
「今なんと? 記憶喪失で二重人格だと? 族長、本当ですか?」
「うむ、因みに我が負けたのはもう一つの人格のほうだ」
「その人格にも名前はあるのか?」
「そいつは自身のことを戦闘プログラム? と呼んでいたがどうなのだホイヒラー?」
「ないが、ないと不便だな。……シュラハトだ」
『戦闘プログラムにシュラハトと命名します。以後、戦闘プログラムはシュラハトと呼称します』
「シュラハトか、いい名だな」
アルヴァングはどんな名でもいい名だと言うような気がした。
「では、集落の者に紹介するか」
「よろしく頼む」
その後、アルヴァングは、集落の全員を集めて私を紹介した。如何に集落の者が”普人族”を嫌っていたとしてもアルヴァングの求心力は絶大で、さらに私に惚れているということで、私に表立って敵対したりしてくることはなかった。
しかし、当たり前なことで、私と集落の者の関係は冷え込んでいた。集落の者達は私に話しかけてこず、女性からは睨まれもした。
話をするにしても、お世話になっている族長のアルヴァングとだけで、この世界のことを空いている時間に教えてもらった。アルヴァングは私が元の世界の知識を話しても気にせずそのことを集落でも暮らしに生かせないか一緒に考えたりした。
けれども、たとえ集落であっても統治者の仕事は忙しく、私は独りの時間の方が多かった。
今日の投稿は以上です。次話からは不定期更新ですが今週中に一話投稿する予定です。