第一章 〈勝負のゆくえ〉
テストが終わり一週間が過ぎた。
テストはすべて返却され、順位が公表された。各科目上位十人と、総合順位上位十人が中庭の掲示板に張り出された。
山瀬光輝の名はすべての科目の最上段にある。圧倒的な存在感を醸し出していた。
成績の掲示を見に来る人は、たいてい頭が良い。自分の名前があるか、ライバルとの差はといったことを確かめる手段であるからだ。そんなわけで、掲示板の周囲に集まっているのは、この学校でも秀才と呼ばれる人達だけである。
光輝は、過去四回テストを受けたが一度もこの掲示を見に来たことはなかった。自分の立ち位置は、もうすでに分かっていたからだ。ましてや、周囲の人の成績などに興味があるはずがなかった。
光輝は、群がる秀才の輪の外から遠巻きにその様子を見ていた。今回は、真琴の成績を確認するために参上していた。
一喜一憂する秀才の様子を見ると少し、子供らしい一面を垣間見ることができる。普段は、切り詰めて勉強している人達もやはりまだ子供なのだと思えた。
光輝は、中庭の掲示板の近くのベンチにカメラを片手に座っていた。秀才が解散するまで、メモリーの中身を整理するつもりである。
メモリーには半月で撮った写真約三百枚が収められている。その大半が運動会関係のものである。運動会関係の写真は個人が厳選したのち、写真部の仕事でもある行事の写真撮影のために提出をする。
その後、写真部総出でその写真の分別をする。なんでも、それを後々の卒業アルバムに載せるために、学年別にまとめる必要があるからである。基本写真部は、自分の所属する学年の写真を撮影するようにしているが、出場競技などの関係で撮影できない時には、学年を越えて撮影する。それを選別する作業が写真部の最大の試練であり、大きなプロジェクトとして位置付けられている。
光輝は、ブレが大きい写真や写りの悪いものを削除していく作業をしている。数百枚に目を通し終わった頃には、掲示板を取り巻く集団は居なくなっていた。
光輝はカメラを専用のポーチに戻し、掲示板を見に行った。
一年の欄には、山瀬光輝の名が全科目の最上段にあった。その隣には、二年生の成績が貼り出されていた。村上真琴の名は、全教科の三位以上のところにあった。総合順位は、一位であった。
(真琴先輩、やるじゃないか。みくびってたな。本おごらないといけないのか・・)
光輝は、真琴の成績をカメラに収めた。ついでに自分の成績も。
立ち去ろうと思い後ろを振り向くと、真琴が立っていた。
「あっ、光輝じゃない。成績見に来たの」
「僕のじゃなくて、真琴の成績を偵察に」
「へ~。まだ、私も見てないんだけど、その顔からして三位以内に入れてるようだね」
真琴は、掲示板に近づき自分の成績をまじまじと見た。
「やった、一位取れた」
「おめでとう、と言っておこう」
「ありがとう。で、いつ本買ってくれるの」
「僕は、いつでもいいんだけど」
「じゃあ、今日の放課後はどう」
「いいよ。でも、部活の仕事で少し遅れるから午後六時ぐらいに家に迎えに行くよ」
「うん、分かった。忘れないでよ」
「僕は、約束を守らないような男ではないから、肝に銘じておいて」
「私、委員会の仕事があるからもう行くね」
「じゃあ、また放課後に」
真琴は第二校舎の方へ歩いて行った。その足取りは喜びに満ちているようだ。
光輝は、その足で写真部の部室に向かった。
部室には、取り終えた写真を保存するために立ち寄った。
パソコンの電源を入れる。部室には、新旧二つのパソコンがあり、新しい方がノートパソコン、古い方がデスクトップである。データの保存などは基本、容量の大きなデスクトップを使い、写真の編集、加工をノートパソコンで行う。
旧型のデスクトップは、大きな音を立てて起動した。液晶画面は意外ときれいである。古いがそれなりの画質と性能を兼ね備えている。
カメラからメモリーカードを抜き取り、デスクトップに入れた。ファイルを開き、さっきの時間で整理した写真を学年ごとにまとめて、行事専用ファイルにコピーした。
再びメモリーカードをカメラに戻した。
頭上のスピーカーから予鈴が鳴り、昼休みの終わりが告げられた。
光輝は、カメラなどを部室の自分専用のロッカーに入れて自教室に戻った。
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放課後、光輝は部室に行った。今日は写真部全員がこの部室に集結している。
いつもは広く感じる部室も、八人が入ると狭い。二台のパソコンは、部屋の両端に設置され、四人ずつに分かれて写真の確認作業と編集、新聞部に注文されている写真の精選、学校のホームページ用の写真の決定など作業を行う。
中でも、新聞部とホームページの写真を選ぶ作業が疲れる。公になる写真であるため、プライバシーなどの問題が生じるからである。生徒には事前に、写真の公表に関する承諾書を書いてもらうが、それに賛同していない生徒もいる。そうした生徒が写った写真をいくつか挙がった候補の中から削除しなければならない。この確認作業に労力を費やすのである。
結局、四時半から始まった部活は五時半までかかってしまった。
光輝は荷物をまとめると、先輩方にあいさつをすませ、素早く駐輪場に向かった。
真琴との約束の時間まで残り三十分である。真琴の家まで学校から約二十五分。一度家に帰って、荷物を置いて着替えも済ませておきたかったが致し方ない。
光輝は、真琴の家に直行することにした。
この時期の午後五時半はとうに日が沈み暗い。自転車のライトが点灯していることを確認し、出発した。
五時五十八分、待ち合わせ二分前に光輝は真琴の家の前に到着した。インターフォンを押した。ピーンポンという音の後に、母親らしき人が玄関から出てきた。
「初めまして、K学一年の山瀬光輝と申します。真琴先輩いらっしゃいますか」
「あら、いまさっきおじいちゃんに会いに行っちゃたわよ。真琴に用事があるなら私が伝言しておくけど」
光輝は、唖然としていた。
(約束の時間の前に、おじいちゃんに会いに行く人がいるのだな~)
「先輩に合わないと果たせない用事なのでまた後で伺います」
「急ぎの用事なら、おじいちゃんのところまで案内しますよ。ここから自転車で十五分程度のスーパーですから」
「もしかして、スーパー加藤ですか」
「ええ、そうよ。おじいちゃんはそこの店長をしているの」
(えっ、店長が真琴のおじいちゃんなのか)
「分かりました、ありがとうございます。いまからそこに向かいます」
「気を付けてね」
道端に止めていた自転車に乗り、スーパー加藤に向かった。
ここで一番最悪なのは、行き違うということだ。なんとしてもそれだけは避けたい。光輝は、真琴と初めて話した日の帰りに通った道を使った。ここを通れば行き違う可能性は限りなく少なくなるからだ。
スーパーに着くと駐輪場に自転車を止めた。周りの自転車を確かめると、真琴のものがあった。どうやら、行き違いは避けられたようだ。
スーパーに入るなり、サービスカウンターの佐藤さんに店長の所在を尋ねた。
「店長なら、店長室にいるけど、今はお取込み中よ」
「お孫さんが来ているのですよね」
「そうだけど、なんで光ちゃんが知ってるの」
「その人、僕の先輩なんで。お仕事中失礼しました」
光輝は、店長室に行った。
木製の扉の前に来た。中から声は聞こえない。ノックをして、扉を開けた。
「失礼します」
部屋の中で、店長と真琴が机に座ってお菓子を頬張っていた。二人は、急に開いた扉を注視していた。真琴は扉に背を向ける形で座っており、店長は扉に向かって座っていた。
「なんで、あんたがここに居るの?」
「真琴、光ちゃんと知り合いのか」
光輝の方を振り返っていた真琴は、店長の方へ身をひるがえした。
「知ってるもなにも、後輩なんだけど。でもなんで、おじいちゃんが知ってるの」
ほったらかしにされている光輝は、扉の前で立ったままだった。
「光ちゃんとは、十年ぐらい前から知り合いなんだ。よく、買い物に来てくれていてね。光ちゃんも、そんなところで立ってないで腰かけなさい」
「ありがとうございます」
光輝は、店長と向かい合うように、真琴の隣に座った。
「で、どうして光ちゃんがここに来たんだい」
「今日は真琴と本を買いに行く約束をしていたんだけど、迎えに行ったらおじいちゃんの所に行ったって言われてここに」
光輝は真琴を睨み付けた。
「あっ」
真琴は口を手で押さえた。
「あっ、じゃないだろ。約束忘れるなって言ったのそっちなんだけど」
「ごめん。思いっきり忘れてた」
真琴は顔の前で手を合わせて謝った。
「やっと、一位取れたからおじいちゃんに報告したくてたまらなかったの」
「まあいいんだけど、それで後どれぐらいかかりそうなの」
「それなんだけど、おじいちゃんが一位取ったって言っても信じてくれないの。光輝の口からも言ってあげて」
「だって、そりゃそうじゃろ、あれだけ遊んでばかりいたんだからな」
店長は、コーヒーを飲んだ。机には、コーヒーと抹茶のロールと思われる品が置かれていた。
光輝は、持っていた荷物からカメラを取り出した。電源を入れて、今日の昼休みに撮ったあの掲示板の写真を画面に表示した。
「これ見てください。順位を校内で掲載した掲示板の写真を撮っておいたので」
光輝はカメラを店長に渡した。
「どれどれ、おっ、本当じゃ。一位村上真琴と書いてあるわい」
「いったじゃない、孫の言うことが信じられないの。これで約束はちゃんと果たしたからね」
「分かった。それより、二人は今から本を買いに行くのじゃろ。ほれ、これで買ってきなさい」
店長は、カメラを光輝に返し、ポケットの財布から図書カードを取り出した。それを真琴に渡した。
「ありがとう。さすが、おじいちゃん。じゃあ、もう行くね」
真琴は、足元に置いていたリュックサックを持ち上げて、立ち上がった。光輝はカメラを鞄に戻すと、それに続いた。
「僕も、これで」
「光ちゃんも元気でな」
二人は木製の扉をくぐり、店長室から出た。
「ホントにごめんね」
真琴は再び手を合わせて謝った。
「もういいって、それよりどこの本屋に行く?」
「学校の近くの本屋がいいけど、あそこは人が多いからね。小さいけど、商店街の方に行かない?」
「人がいても、大きな本屋の方が品揃えがいいんじゃないの」
「でも、その、あれでしょ」
「なんだよ。はっきり言えよ」
「カップルと思われたら気まずいから」
光輝は顔が熱くなるのを感じた。
学校の近くの本屋は、K学のたまり場として有名なのである。行けばかならずK学生に出会うだろう。たしかに、二人でいればカップルと思われても不思議ではない。
「友達に女も男もないだろ。だれと居たって個人の勝手だと思うけど」
「誤解を招くようなことは、避けるべきだと思うの」
光輝はそれ以上抵抗しようとしなかった。たぶんしても意味がないと悟ったからだ。
「分かった。じゃあ、商店街の方に行こう」
二人は、近くの商店街の本屋に向かった。商店街は、シャッター通りに近い状況になっている。残っているのは、銀行とコンビニ、薬局、花屋、本屋だけである。昔は、八百屋や肉屋、魚屋などもあったそうだが、今は無くなっている。
本屋に到着したが、二人以外の客はいなかった。この本屋は、地域の教科書販売を行っているため小さいながらこうして営業で来ている。
「どんな本がいいんだ。やっぱり、ファンタジー系なのか」
「えーとね、あ、あった」
真琴が手にしたのは新書であった。フォトンに関する書物であった。
「新書読むの?」
「もう受験を視野に入れとかないといけないから、こういうものを読もうかなって思って、これを買ってくれますか」
「了解しました。次のテストでも勝負する?」
光輝は新書を手にレジに向かう。真琴はその後ろに続く。
「次は止めておこうかな。勝ち逃げしてもいいでしょ」
「僕としては、負けて終わるのは悔しんだけど」
「私だっていやだよ。負けて終わるなんて面白くないもん」
「でも、勝者がいたら敗者もいるわけだし、負け越して人生終わる人もたくさんいるんだろうな」
レジで本を渡し、お金を払った。光輝は、カバーを付けてもらった新書を受け取ると、それを真琴に渡した。
「ありがと。これからどうする?」
真琴は背負っていたリュックをおろし、新書を入れた。
「まっすぐ家に帰る他ないでしょ。それとも僕とデートでもしたいの」
「そんなはずない無いでしょ。馬鹿にしないでよ」
「それじゃあ、自転車押して帰る?」
二人は、本屋を出て薄暗い商店街のアーケードの中に出た。街灯もまばらにしかない。本屋の前に止めていた自転車のロックを外し、二人は自転車を押しながら並んで歩いた。
「聞きたいことがあるんだけど、聞いてもいい?」
周りの明かりもなく、自転車のライトだけが二人の前を照らしている。お互いの顔もはっきりとは見えない。
「なんなりと」
「さっき、おじいちゃんにカメラ見せてたでしょ。あれは、何なの」
「何って言われても、僕写真部だし、持っていても不思議じゃないと思うんだけど」
「じゃなくて、何であんな高級なカメラ持ってるのって聞いてるの。あれ、五十万はするでしょ」
「真琴はカメラに詳しんだね。これは、おじいちゃんからもらったものなんだよ。確か六十万ぐらいだったかな。僕のおじいちゃんはとある企業の社長でね、お金はあまるほど持ってるから。いいものを大金だして買って、死ぬまで使うっていうのがおじいちゃんのポリシーだから、高校入学祝いにこれを死ぬまでつかいなさいって買ってもらったんだよ」
「六十万のカメラなんか学校に持ってきて壊されたり、取られたりしたら大変じゃない」
「その点は心配しなくていいよ。ちゃんと写真部のカギ付きのロッカーに保管するようにしているから」
「それにしても、おじいちゃんが社長なんてすごいじゃない。さぞかし、光輝の家も裕福なんでしょうね」
「それって皮肉?」
「いいえ、まったく」
「この前も言ったけど、僕の家は真琴の家よりも小さいから。たぶん半分以下のひろさだよ。アパート暮らしだから、一軒家の真琴よりも肩身の狭い生活してるんだけど」
真琴は驚いて、光輝の顔を覗き込んだが暗くて表情までは見えない。顔の輪郭だけが、闇に映っている。
「驚いた?」
「うん、まあ。孫に六十万のカメラを買えるような社長の孫がアパート暮らしなんてだれも思わないわよ」
「去年までは大きな家に住んでたんだけど、今は僕一人になったし、アパート暮らしでちょうどいいんだよ」
「一人暮らしなの?」
「父さんはおじいちゃんの会社の副社長として今ニューヨークにいるんだ。母さんは、僕が中学一年の頃に癌で・・・、今は天国でバカンスでもしてるんじゃないかな」
真琴は、知ってはいけないことを知ってしまったような気がした。光輝のこころに土足で踏み入ってしまったような罪悪感が彼女の胸に宿った。気まずい雰囲気が二人を包み込んだ。真琴は俯いたまま歩いている。光輝は、どこか遠くの方を見ていた。
「なんか、聞いたらいけないこと聞いたかな。ごめんね」
「謝ることないよ。それよりもさ、僕から質問してもいい」
「うん」
「店長に会ったときに、約束は果たしたから、って言ってたけど何を約束してたんだ」
「私が高一の夏休みに、おじいちゃんの所に泊まり込みで行ってたの。それで、また遊びに行ってもいいかってきいたら、一位を取ったらなって言われて、それから必死に勉強したんだけど、全然取れなくてね。今回やっと取れたってわけ」
「なんだ、そんなことだったのか」
「なんだ、って何よ」
「僕との約束を反故するほどのよっぽど大切な約束だったのかなと思ってただけだよ。まさか、一年以上前の約束を覚えていたのに、数時間前の約束を忘れるなんてね」
「もう、そのことは言わないで。私だって反省してるんだから」
「はい、はい。じゃあ、僕のアパートここ曲がったところだからここでお別れだね」
光輝は、T字路で足を止めた。
「今日は、護衛してくれないの」
「ごめん、そろそろご飯炊き上がる時間だから。あんまり、炊飯器の中に入れたままだとまずくなるからね。真琴が炊飯器からご飯を出す間、待ってくれるなら送るけど。そんなの面倒だろ」
「そうね。今日は一人で帰る。本ありがとう。明日は、夜例の本棚に本返しに行くんだけど、気が向いたらコーヒーでも一緒に飲まない?八時ぐらいに右角の席に座ってるから」
「考えとくよ。じゃあ、気を付けて」
「また、明日ね」
真琴は、自転車に乗り、闇に消えていった。
光輝は、自転車を押したままアパートまで行った。自転車を駐輪場に止めて、前かごの中のヘルメットを取り、カギをかけた。
「ただいま」
ピーピーピー。炊飯器の炊き上がりを告げるコールだ。
(おかえり、って炊飯器が言ってやがる)
光輝は、まっすぐ突き当りのリビングに向かった。荷物をソファーに置くと、キッチンの炊飯器を開けて茶碗によそった。
二つの茶碗によそって、うち一つを仏壇の前に持って行った。
「母さん、今日も一冊読めたよ。約束まであと二百冊だね」
光輝は、仏壇に茶碗を置き、一人で静かな晩御飯を食べた。
孤独な時間にはもう慣れた。父さんが、ニューヨークに行くことになった時も、ついていくことはできた。でも、しなかった。M.M.との交流があの頃の僕の唯一の心の支えだったから。
でも、今思えば不思議だ。なぜ、僕はM.M.に会おうとしなかったのだろう。あの本棚の前で待っていれば、会うこともできただろう。会ったら何か変わっていたとも思えないが、それでも会いたいと思うのが普通ではないか。
僕は心のどこかで分かっていたのかもしれない。会ったらこの関係が終わってしまうことを。それが怖かったのかもしれない。
僕はとことん臆病な人間なのだ。周りからは、賢くて、金持ちなんて思われているかもしれないが、実際貧弱な男なのだ。
思いがけなくM.M.と会ったが、僕が危惧していたほどのことはなかった。むしろ、その関係が深まったようにさえ思う。一年近く、手紙による交流をしていたが、意外と僕の想像通りの人であった。性別を除いて。見知らぬ僕に手紙であれほどまでに悩みの相談などをしてきた人はいないし、相談に乗ってもらった人もいない。
どうやら、僕は真琴に頼り過ぎているようだ。甘え過ぎていたようだ。母さんが居なくなって寂しかったからかもしれない。父さんも仕事で大変な時期でもあたし。
僕が思っている以上に、真琴は僕にとって大切な人なのかもしれない。
光輝は、孤食を終え食器を洗った。水道水は、氷水ほど冷たい。
「ちょっと、待てよ。明日は土曜日で学校は休みだよな」
光輝は、『また、明日ね』という、真琴の言葉を思い出した。
「あれって、明日来いよって意味なのか。まあ、明日は特に用事もないし、行ってあげようか」
光輝は、キッチンで一人笑っていた。
(久しぶりに家で笑ったような気がする)
少年は一人、静かな部屋でひと時の幸せを感じた。
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