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本返し  作者: 愛松森
第三章
22/25

第三章 朝礼

今週は21~23部更新しました。

月曜日の朝、K学で全校朝礼が開かれた。普段とは違ったイレギュラーな朝礼に生徒たちざわついていた。教員も生徒も全員が体育館に集合して朝礼が始まった。


「本日は、元生徒会生徒会長上田龍之介からお知らせがあります」


生徒会の生徒の司会で、上田がステージに上がった。ステージ中央に設置されているマイクの前に立った。


「今日は、皆さんの貴重な時間を割いていただきありがとうございます。どうしても皆さんに知っておいてもらいたいことがありますのでまずはこちらを見てください」


上田は、ステージ脇に座っていた放送部に合図した。合図と同時にステージ上からスクリーンが下りてきて、映像が映し出された。


「これは、先週の水曜日に裏門の前で撮影された映像です。道を挟んで向こう側にあるコンビニの防犯カメラの映像を借りてきました」


スクリーンに映った映像は、女子生徒が男子生徒を蹴りつけているところだった。全生徒にどよめきが走った。


「先週の水曜日と聞いて思い当たる人もいると思いますが、先週朝礼で榊原先生が言っていたあの事件が起きた日です。そしてこれが、その事件の真実です。この男子生徒は、ご覧のとおり一方的に暴行され、全治一ヶ月程度の骨折をしました。そして、この事件の真犯人は二年山室綾香であるという情報が入っています」


この発言は、二年女子全員を敵に回すことになった。二年女子が一斉に立ち会挙がり、騒ぎ始めた。それに喚起されて、三年生以外の生徒も立ち上がり大声で異を唱えた。三年生は、事前に上田がこのことを伝えていたので、混乱は無く落ち着いていた。


「静かにしろーーー。人の話ぐらい黙って聞け」


体育館の隅にいた榊原先生が一喝して、生徒は仕方なく騒ぐのを止めて座った。


「話を続けます」


再び上田がステージで話し始めた。


「皆さんもすでにご存じであると思いますが、この暴行を受けている男子生徒が一年の山瀬光輝です。彼は、手紙であの場所に呼び出されて暴行されました。決してわいせつな行為をしたという事実はありません」


上田は、ステージの裏にスタンバイしていた真琴に手招きをした。それを見て真琴と有沢志保がステージに出てきた。それを見てまたざわめきが起きたが、山室が一人立ち上がりそれを静止させた。


「おい、志保。これはどういうことなんだ」


山室が、体育館後方から大声で言った。


「ごめん。私、自分に嘘つくのに疲れたから」


「すきにしな」


そう吐き捨てるように言うと、山室は足早に体育館から出て行った。誰もそれを止める者はいなかった。


「二年の村上真琴と申します。この度のことについてご説明申し上げます。私と山瀬光輝は中学時代からの読書仲間です。そんな彼が私がいじめられているのを知って、先輩である山室綾香にはむかったのが事の始まりです」


真琴がマイクから一歩後ろに下がり、代わりに有沢がマイクの前に立った。上田はそれを少し離れたところから見ていた。


「二年の有沢志保です。私が山瀬に手紙を渡して裏門に呼び出すようにと山室に指示されました。先週榊原先生の言っていたようなことは、まったくの嘘です。この度は、全校生徒の皆さんに多大なご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます」


有沢は、深々と頭を下げた。全校生徒は、黙ってそれを見ていた。


「以上で今日の朝礼を終えようと思いますが、何か質問や疑問点がある方がいらっしゃいましたら挙手お願いします」


上田がそうアナウンスすると、三年生の生徒が一人手を挙げた。生徒会の生徒がマイクをその人に持って行った。


「三年、写真部部長の早川です。山瀬くんは、被害者であって加害者ではないということですか?」


「はい」


「それでは、これからも部活動をいままで通り行うことも可能ということですね」


「今は骨折しているので、活動に制限が出ることもあると思いますが、今まで通りの学校生活を送ることが出来ると思います」


「ありがとうございました」


早川は、座ってマイクを生徒会の人に返した。次に手を挙げたのは、いつも山室の隣にいる佐藤であった。


「二年の佐藤です。これから山室さんはどうなるのでしょうか」


「今後の対応は、先生方と当事者の話し合いで決定することになっているので、今は何も言えません。ですが、山瀬は今回のことは水に流すと昨日言っていましたので決して最悪な結果にはならないと思います」


「分かりました。ありがとうございました」


次に手を挙げる生徒はいなかった。それを見た体育館の端にいた榊原先生が手を挙げた。


「今回は、教師陣にも責任がある。本当に悪かった。しっかり今後の対応を協議して、きちんと報告することにする。それまでしばらく待ってくれ」


そういって、マイクを返した。


「他に質問が無いようなので、これで朝礼を終わります。一限目の開始まで五分しかないので移動を急ぐようにお願いします。今日は本当にありがとうございました」


ステージに立っている三人が頭を下げた。すると、榊原先生から始まり生徒全員が拍手した。体育館中に拍手が鳴り響き、その余韻の中で三人は晴れやかな気持ちでステージから降りた。


毎週日曜更新です。

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