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序ノ火 決意の天火(てんか)と降り注ぐ歌声 4
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天空の上、地より遙か天に在る、空に浮く大地。
民はソレを《問いかけの大地》と呼ぶ。
天空ノ巫女──カグヤが、神々へあまねく生命へ、祈りと想いの歌を捧ぐからだと、地の名の由来を語る者達は言う。
語る者達は“貴民”と呼ばれ、大地の中に広く住む。
ソノ中でも一部の者達は、カグヤの住まう《問いかけの大地》で最も清らかな地──《凛浄》で、カグヤと共に住まうことを許されていた。
カグヤは女神──イサナの神託によって選ばれる高貴で尊き存在。
“平和ノ象徴”として、民々に強く崇められる清らかな存在。
そんな尊き天空ノ巫女──カグヤは、《凛浄》の中心の神殿に住まい、ソノ下に四方を少し低い段状になった社──《火ノ宮》、《水ノ宮》、《土ノ宮》、《風ノ宮》に、四人の眷族と神官達を住まわせている。
カグヤのソノ御姿は滅多に見れないとされるが、多くの歴史や神話、伝承、伝説、民話、語伝を深く濃く知る一部の貴民は、《凛浄》の者からカグヤの側につくことを許される。
彼女──ラシュフェーニカもまた、そんな選ばれた貴民の一人だった…。
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