【静寂と孤独】
「いや、何寝ちゃってるんだよ!?起きたまえよ!僕は両脚折られてそのままなんだよ?せめてそのタブレットから何か治療できるものを出すとか……駄目だ二人とも起きない……」
折られた脚が痛い。すごく痛い。結局僕は何もできなかったし、まったく嫌になってしまうね。
昔からそうだ。レイピアの腕は褒められて持て囃されても、いざ実戦になると勇気が出ない。それでも負けたくなくて足掻くけど、結局目を背けて逃げてしまう。何もできない。何もできやしないけど何かを成したい。好きな人のために頑張ってみようと思ったけど、その人と彼との間にある何かから感じた恐怖に飲まれて逃げてしまった事実もあるしホントに嫌になるね!
「僕は、強くなりたい……」
強くなれる機会だと思ったから、何もかもを変えてしまいたかったからあの時ユウトを追い掛けた。姫様がいるかもしれないと思ったのあるけれど、流れて来る彼の噂を聞いていくうちに僕にない何かを持っていると思っていたからだ。
知らない世界に来たのにうろたえることもなかったみたいだし、積極的に暮らしに慣れようとするし、何よりも自分の非力さに嘆きながらも逃げずに立ち向かっていく姿勢、僕には眩しかった。
……後ろ向きに走り出した時は目を疑ったけどね。
僕の家は剣の国ガルマンドにおいては由緒ある家だ。代々側近として王を補佐し、また守護してきた。僕に兄弟はいない。だから、小さい頃からそうなるように教育されてきたし訓練されてきた。別にその時間が苦だったわけじゃないよ。きちんと時間配分されていて自由な時間もたくさんあったんだ。
「でも、みんな僕に対して遠慮するんだ……」
堅苦しいんだ。目を逸らされるんだ。僕じゃなくて僕の家系を見てるんだ。でも、これがこの家に生まれた僕の宿命なんだ。王を守る為に一生を捧げても悔いのない人生を送るんだ。臆病な僕ながらにそう決心していたよ。
だからこそユウトと話すのは楽しい。ああ、こんな僕にも気兼ねなく話せる存在が出来たんだと嬉しくなる。きっと賢者様へ勝手にメッセージ送ったのは突っつかれるだろうけど、それでいいよね?気兼ねなく何でも言い合えて、たまにからかって、もしかしたら本気で喧嘩したりするかもしれない……ユウトとはそういう関係になりたいんだ。
これからロワールへ行って、そこから先どうなるかは分からない。もしかしたら僕のこの状態ではここに置いて行かれるかもしれない。……いや、二人がそんなことするわけないよ。きっと連れて行ってくれるさ。
「もし置いていかれても、這ってでもついて行くから覚悟したまえよ。」
寄り添いあって眠る二人にそう呟いてみる。これが、今の僕の決意だ。
「……いや、何で自然に寄り添い合ってるの君達?流石にちょっとムカつくんだけど!もっと僕を労いたまえよ!両脚折られてるんだよ?最後ちょっと頑張ってソリ・アリに声掛けたんだよ!?僕がいなかったらここに到着出来てたかわからないんだよ!?せめて!応急処置ぐらい!したまえよっ!!……駄目だ起きない……」
まだ夜も更けたばかり。願わくは空が白む前に僕の憤りが収まって安らかに眠れますように……




