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第26話(7月)〜三者三様〜

 いや、これが本年度初投稿って……いや、学生さんは無駄に忙しかったです汗

 本年度も、こーしょーをよろしくお願いしますm(_ _)m

「いっつも言ってるけどもさ、佳ちゃんにはどうにも、色んな視点から物事を見るって作業が足りないと思うわけですよ私めと致しましては」

「せっかくの休日に勉強の話を持ち出すな。大体な、あれをどうやって見りゃ猫になるってんだよ?」

 訳の分からん口調については敢えて何も触れないでおく。

 ちなみに、問題のオブジェの題名は『青春』。

 すぐ下の台座に設置されてた解説文曰く、『大人達がかつて経験し、そして若者がこれからも経験していくであろう思春期。その中で生まれる葛藤、苦悩、瞑想、そして成長……そういった諸々を石像という形で表現した』とか何とか。

 地元生まれの有名な彫刻家に創作を依頼したものらしい。

 まあ、芸術を解する人間が見れば大層な作品なんだろうが、素人の俺に言わせれば『只の石塊』の一言に尽きる。

「むー……七恵(ななえ)は納得してくれたのになー……」

 心底不満そうにぶーたれる夏乃。

「そりゃお前、お世辞ってやつだろーよ。否定すんのも可哀想だしとりあえず同意してやろうって優しさだ。いい友達持ったな」

 こいつ並みにネジの外れた感性を持っている人間がそうそういるとも思えない、と言うか思いたくない。

「ちっ違うよっ! 『あー猫かぁ……………………………………………………うん、そう言われてみるとちょっとこう、斜め下の方から見上げれば猫に見えなくもないかなー、ははは』って言ってたもん!」

「それを肯定の意ととれる辺りがお前の長所なんだろうな」

 短所とも言うのかもしれないが、とりあえずはその無意味に長い三点リーダに疑問を持てと言いたい。

 七恵さんとやらが普通な感性を持っていることに安堵し、素直に『猫には見えない』と言ってやれない辺り、きっと気の弱い子なんだろうなあなどと会ったこともない彼女に思いを馳せつつ、むくれる夏乃の顔から窓の外を流れていく景色へと視線を移した。


 目的の映画館は三駅ほど先である。時間にして十分ちょい、といったところらしい。

 席を確保できなかった俺達は、並んで吊り革につかまりながら、目的地への到着を待っている。

 前述したように俺はほとんど公共の交通機関なんてものを利用しないタチなもんで、これが多いのか少ないのかはよく分からないが、休日の午前中なら、もう少し人が多くてもいいような気がしないでもない。

「あ、そう言えば佳ちゃん、他の約束はどうしたの?」

「半ば強制で承諾させた癖に何を今更……ってか俺、用事あるなんて言ったか?」

 いや、先約があったと言えばあったわけだが。

「ん? んー、まあ女の勘ってやつかなー。その反応から察するに、私の直感も捨てたもんじゃないっぽいね」

 何か得意げに笑ってやがるが、用事があると気付いていた上で選択の余地を無くしているってことは、確信犯だったらしい。

「……夏乃、こっち向け」

「ん? 何かなっ……ってあ痛たたたたたたたたたっ痛い痛い痛いっ!」

 警戒心の欠片も持たずにこちらを振り向いた夏乃の頬を、空いている右手でぎりぎりとつねる。

「おっ女の子に暴力振るうなんて佳ちゃん最て痛たたたたたたたごめんなさいごめんなさい事情は良く分からないけど謝りますからこの手を離して下さいお願いしますからっ!」

 今回と言う今回は流石に頭にきたので、つねる力を強くするに加えて右にみょーんと引っ張ってみる……おお。人間の頬ってのは結構伸びるもんだな。

 ……いや、自分でも女の子に手を出すのは褒められたことでないのは重々承知済みである。

 だがそれでも、昨日の俺の精神的苦痛と、近い未来に約束された悲劇を考慮に入れれば、頭に拳骨落とさなかっただけでも感謝してほしいくらいなのだ。




 ◇………………◇………………◇




 ケースその一。北澤信次の場合。

『どうした佳祐? 大抵の用件メールで済ませるお前にしては珍しい』

「あ、いやな、明日の話なんだが……」

『……その口ぶりから察するに、来れなくなったんだろ?』

「あー……その……はい」

『そうか……』

「…………申し訳ない」

『ん? あーいやいや、まあ急な用事が入ったなら仕方ないだろ。休みはこれからなんだし、遊ぼうと思えばいつでも遊べる』

「そう言って頂けると本当にありがたいですはい……」

『ただなあ……俺一人であいつら納得させるのは流石に無理だろうからな、悪いが佳祐、二人んとこにも行けなくなったと伝えてくれないか?』

「? 上野はともかくとしても何で美月まで言わなきゃならねえんだ?」

『お前って奴は……いいからかけろ。美月の番号知らないのなら俺が教えてやるからとにかくかけろ。いいな?』

「ま、まあ……とりあえず了解したども、何でお前が美月の番号なんか知ってるんだよ?」

『今日訊いといたんだよ。急な変更あるかもしれないからってな。いいか言うぞ? 090―……』

「あ、ちょっ、ちょっと待てっ……メモメモ……」


 ケースその二。上野雄大の場合。

『あいあーいこちら上野雄大の携帯電話でございます早速ではございますがご用件をどーぞっ!』

「……前々から思ってるんだがそのハイテンションな電話の出方は止めた方いいと思うぞ?」

『なーんだ佳祐かー。いつぞやも言ったがこれぁ俺の美学なのさっ! 例え満員電車の中だろうとこのポリシーを曲げるつもりは無いね!』

「そもそも電車の中で電話に出るんじゃねえ」

『うっさいわよ雄! あんたの声でかくてテレビの音聞こえないんだからもうちょっと静かに喋ってよ!』

『あーごめーん!』

「今の誰だ? お前んとこの母ちゃんにしちゃ随分声が若々しかったけど」

『んー? うちの姉ちゃん』

「あ? お前んとこ兄弟なんかいたの?」

『あれ、俺言ってなかったっけ? 上に二人姉ちゃんがいるんだけども、どっちもとっくに家出て一人暮らししちゃってるんよ。上の姉ちゃんは主婦で、真ん中の姉ちゃんは大学生。そいで今の声は大学終わったってんで帰省してる真ん中の姉ちゃん』

「あー……まあお前んとこの家庭の事情の話はまた今度ってことで。それよりもちょいと話がある」

『んー? 何だよ何だよもしかしてあれか? 恋の相談ってやつかぁ? そういうのなら百戦錬磨の俺に任しとけ?』

「……もしそうだったらそもそもお前にゃ電話しねえよ。負け戦しか経験してねえ人間に恋の相談なんかするかボケ」

『ほんっっっとあんたって子は口が悪くなっちゃって……母さん悲しい』

「お前みてえなガタイのいいお袋にゃ産んでもらった覚えも育てたもらった恩もねえよ」

『そいで話を本線に戻すが、何の用件だ? 明日観る映画が決まったんか?』

「変わり身早いなおい……まあいいや、俺明日行けなくなったから」

『…………』

「……上野? どうした?」

『…………っざけんああああああああああああああああっ!』

「っ!」

(数秒間のハウリング音)

『雄っ! あんたホント何回言えば分かんのよ! 声がでかいって近所から苦情来てんだからね!』

『うっさい今それどころじゃないんじゃぼけえっ! いいからとにかく考え直せ佳祐っ! どんな用事かは知らんがそんなん重要じゃねえ! 断れ!』

「あー上野? とりあえず落ち着いたほうがい」

『ぼけってあんた……っ! 姉ちゃんに向かって何て口きいてんのよ!』

『だーから今それどころじゃねえんだっての! テスト明けで疲労困憊な脳みそフル回転してよおおおおおおく考えろ! お前がいなくなったら俺と委員長と北澤の三人なんだぞ! 基本北澤無口なんだからホラ、どうなるか想像するだけでこちとら首吊って死にたくなるぞ! お前ってクッション材がどうしても必要なんだよおっ!』

「だ、大丈夫だろそんな心配しなくても……ってか何か後ろの方から階段登ってくる音聞こえるけど大丈夫か?」

『もー今度という今度はあっっっったまきたっ! あんたの性根をこの愛の聖拳で根っこから叩き直してやるっ!』

『うおっ姉ちゃ……ちょっ、待っ、痛い痛い痛い! 今友達と話しげひゅっ!』

『修正! 修正! 修正!』

『おうひゅっ! ……佳祐てめえ覚えとけこんちくしょぶふぉっ! 待ってねっ、姉ちゃんこっ、これ以上ボディーはっ! ボディーはああああああっ! あああああああ』

(ここで電話が切れた)


ケースその三。美月伊空の場合。

『……はい美月ですが、どちら様でしょう?』

「あー……その、高井田だけども。番号は北澤に訊いたんだ」

『……佳祐君?』

「あ? あ、ああ」

『どうしたのこんな時間に? 明日の集合時間が変更になった?』

「いや、そうじゃなくてな……その……あ、明日さ、俺急な用事で行けなくなっちまったんだ。それを伝えようと思って」

『……もしかして、私がいるから?』

「あ? いや、そんなつもりじゃ」

『ううん、分かってる。私が告白してからずっと佳祐君私のこと避けてたもの。いいの、私が行けなくなったってことにするから、三人で映画、楽しんできて』

「いや、だから違うって! 美月のせいじゃないんだホント! いや、確かに美月のことはどうしても避けちまってたんだけども、それとこれとは話が別で、前々から約束してたことがあったんだがそのことすっかり忘れててだから……あーくそっ! と、とにかく美月のせいじゃないってのは嘘でも何でもない!」

『……ふふっ』

「あ、あの……美月?」

『ごめんなさい、何だか佳祐君が必死なのがおかしくて……分かった。明日は北沢君達と遊ぶわ』

「お、おう……何かよく分からんがホントに申し訳ねえ」

『ええ、それで? 用件はそれだけ?』

「お、おう」

『……分かった。それじゃお休みなさい』

「あ……ちょっと待ってくれ」

『?』

「その……何だ、返事なんだが……もう少し時間くれないか? お、女の子からの告白なんて生まれて初めてでよ、どうすりゃいいのかよく分かんねえんだ……何て言うか、自分の中でちゃんと整理がつくまでは返事できねえんだ」

『……分かった。待ってる』

「ホント優柔不断でごめん……それじゃまた学校で」

 大変残念なお知らせがあります(´・ω・`)

 楽しみにしてくださっている皆さんには大変申し訳ないのですが、「不器用なあいつの彼女」の更新を凍結しますm(_ _)m

 執筆作業は細々と続いてはいるのですが、どうにも遅々としておりまして、このまま前編だけを発表しておくのはなんだか私的によろしくない感じがしまして、こういった決断に踏み込みました。

 近日中、必ずや皆様の目に、三人の恋模様の結末をお送りする所存ですので、もうしばらくの猶予を下さいm(_ _)m

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