第23話(7月)〜避暑か水分補給か〜
随分とまた間が空いたもので……楽しみにしていた読者の皆様にはホント申し訳ないことをしたなと反省しまくりのこーしょーです(´ω`;)
つい最近までちょっとしたスランプに陥っちゃってましたが、ようやく光が見えてきました(多分……)ので、きっと執筆スピードも上がるでしょう、いや、上げてみせますとも!汗
そんなわけで、どうかこんなこーしょーを見捨てないでやって下さいm(_ _)m
何だろう? モヤモヤとしたというかこう……ヤキモキ、少し違うな。んー……、モキュモキュ?
「いやモキュモキュって何だよ」
思わず独り言が漏れた。
あー……まあ、とにかくそんな、言葉では形容し難い気持ちを抱えたまま学校を出て、いつものように待ち合わせ場所であるコンビニへ到着。
「あ、佳ちゃんお疲れーっす」
既に到着して俺のことを待っていた夏乃は、コンビニで買ったらしいスポーツドリンク入りのペットボトル片手に、スタンドを立てた自転車に寄りかかっていた。
「悪い。結構待ったか?」
「んー、そんなでもないかな。十分ちょいってトコ」
涼しげな表情で平然と言ってのけて、ペットボトルをぐいっと呷る夏乃。
が、その顔をよぉぉぉぉく見てみると、額にぽつぽつと汗の玉が滲み出ている。
「……中に入って待ってりゃよかったじゃねえか」
本日の天気は予報通りの快晴である。
うだるような暑さとは言わないまでも、照りつける太陽と気が狂ったような蝉の大合唱の中で待っているのは、たとえ十分といってもきつかった筈だ。
……というかそもそも、待たせたこちらに全面的に非があるのに、口調はどうしても夏乃を責めるようなものになってしまう辺りに自己嫌悪を覚えるも、それは後悔先に立たず、というやつである。
もう少し言葉を選ぶようにと自分なりに心がけているつもりなのだが、身についた性分というのは一朝一夕じゃ中々治らないものらしい。
「む、ま、まあそうなんだけどさ。でもお店の中じゃこれ飲めないじゃん?」
そう言って顔の前に掲げた手の動きに合わせて、夏乃が持っていたペットボトルの中身がちゃぽん、と小さな音を立てる。
「そんなん別に俺が来てから買やよかっただろ」
ため息交じりの俺の言葉に、
「……………………きっ、緊急を要してたのです。すんげー喉が渇きまくってたから避暑より水分補給を優先したわけであり、別に佳ちゃんが今言った選択肢がさっきの時点で思い浮かばなかったわけでは決して」
「じゃあ今の無駄に長い沈黙は何だ?」
「う……あっ、そ、そう言えば佳ちゃん、今日の試験の方はどんな感じだったのかなっ?」
話の焦点をずらそうという結論に達したらしい。
「……まあ、少なくとも今回は赤点で補習って展開はねえだろ」
普段頭がきれる癖に、こういうどうでもいいようなことに関しては全く頭が働かないこいつのことだから、恐らく本当に思いつかなかったのだろうが、その辺りは軽くスルーして話を合わせる。
この暑さの中で不毛な言い争いに時間を費やすよりも、一刻も早く家に帰ってクーラーの効いたリビングでテスト終了の開放感に包まれながらまったりしたい、と考えての判断である。
「そりゃ当然でしょーよ。何てったってこーんなに知的で可愛い家庭教師が毎晩勉強教えたげてたんですからねー」
ふふん、と得意げに鼻を鳴らす夏乃。
今の言葉は訊く相手によってはいらん誤解を生んじまうぞ、なんてことはさて置くとして、その自信はどこからやってくるんだろう。
「……ま、一応感謝しといてやるよ」
自分でもどうかと思うほどにぞんざいな口調である。
こいつの教え方が上手かったってのは事実だし、助かったと思っているが、ご存知の通り、俺はそれを素直に伝えることが出来ない性分なのだから仕方ない。
「んー、今のは佳ちゃんなりの感謝の言葉として受け取らしてもらおっかなっ」
長い付き合いのなせる業なのだろうか、そんな無愛想な言葉でも一応感謝の意は伝わったらしく、俺の顔を覗き込んで満面の笑みで応じる夏乃……くそ、やっぱ可愛い。
「……お、おらっ、んなこたどうでもいいからさっさと帰っぞ」
「ん、おっけー、さっさと飲んじゃうからもうちょい待って」
そう言うと夏乃はペットボトルを口につけて、ぐいっと顔を上に向けた。
ごくごくとスポーツドリンクを嚥下するのに合わせて、露になった白い喉が小さく動く。
「っ……ぷはあっ! よっし水分補給完了っ! さーお家へ向けてレッツゴー! ……ってどしたの佳ちゃん私の顔じーっと見て? 帰んないの?」
「……あ? いや、おう、そ、そうだな、とっとと帰って涼むか」
はっと我に返り、夏乃がボトルをゴミ箱に捨てるのを待ってから、俺達はコンビニを後にした。
――……「お前がジュース飲んでいる姿に思わず見惚れてた」なんて、言えるわけねえだろ。