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第21話(7月)〜人見知りの暴挙?〜

 最近ですね、Love is Allという中編小説(こんな言葉あるんでしょうかね……?)を書き始めたんですよ。

いつもの俺とは一味違う文章を、というコンセプトで書き始めてみたシロモノなんですが、もしよろしければご覧になってやって下さいm(_ _)m


「どうせあなたの事だから、まだ一か月あるまだ一週間あるってずっと先延ばしにして結局一夜漬け、って所でしょ? 愚の骨頂ね」

「う……っ」

「同じ失敗を繰り返すのは学習してない証拠。あなたのその頭には何が入ってるのかしら? それとも空っぽ?」

「……お、おっ、お前にそこまで言われる筋合い」

「筋合い? 親切心からの忠告にいちいちそんなもの必要なの? 大体、言われたくないんだったらそれ相応の努力をすればいいじゃない」

 精一杯の反論も一蹴された上野は、怒りから顔を真っ赤にして口をぱくぱくとさせている。

 男なら既に殴っているのだろうが、相手が女なので手が出せない。

「…………」

 怒り心頭の上野からちらりと美月へ視線を移す。

 と、まるでそれを待っていたかのように、上野に向いていた美月の視線がこちらに動いた。

「……っ!」

 交錯する視線。

 俺は慌てて目を逸らした。



 ◇…………◇…………◇




 あれから数週間経つが、俺は相変わらず結論を出せずにいる。

 それでも返事を催促するような事はせず、告白する前と変わらない態度で接してくれている美月。

 が、やはり待たせているという負い目からか、俺としてはどことなく気まずいものがあり、このような態度をとってしまう事も少なくなかった。




 ◇…………◇…………◇




「……美月もその辺にしといてやれ。上野も今回ばかりは流石に懲りただろ?」

 いつの間にやら再びこちらを向いていた北澤が、珍しく美月を諫めた。

「……ま、北澤君の言う通りね」

 大人しく引き下がった美月はは、帰り支度をするために自分の席へ戻っていった。

「き、北澤……」

 初めて助け船を寄越してくれた事への感謝か、うるうると涙を滲ませた瞳で北澤を見上げる上野。

 いや、ひょっとしたら美月に言い負かされた悔し涙なのかもしれない。

「あー……そんな目で見られると正直気持ち悪いんだが」

「はぅあっ!?」

 ……ある意味トドメの一撃だった。

 がっくりとうなだれた上野に構わず、こほん、と咳払いを一つした北澤が続ける。

「……さ、さてと。長かった期末試験も本日ようやく終わったわけだし、今週末にでもどっか遊びに行かないか?」

「はいはーい俺さんせーっ!」

 北澤の誘いから数秒の間を置かず、がばっと起き上がったかと思うと、手を上げて勢いよく立ち上がる上野。

 その余りの変わり身の早さに、俺も北澤も呆れを通り越して苦笑が漏れた。

「……ん? てか珍しいな北澤。お前からそんな事言い出すなんて初めてじゃねぇか?」

 こういった小さなイベントは、最初に上野が言い出し、俺達二人がそれについていく、という形だった。

 北澤が発案者になるなんて、ひょっとしたら知り合って以来初めてかもしれない。

「あ、あぁ……ま、たまにはいいだろ。あ、そうだ。たまにはついでに委員長も誘ってみようぜ」

「「うぇぇぇっ!?」」

 上野と声が揃ってしまったのは、この際脇に置いておく。今この状況において、そんなことは大した問題ではない。

 そんな俺達の非難の声を無視して、美月の席へと歩いていく北澤。

「…………」

 その後ろ姿を呆然と見つめていると、肩をぐっと掴まれ、

「どっ、どどどどーしちゃったわけよ北澤の奴! 試験勉強のストレスで頭イッちまったのか!?」

 上野の慌てようもご尤もではあるが、俺に訊かれたところで、満足いくような答えは持ち合わせていない。

 俺だって何が何やら混乱しているのだから。


 俺、こと高井田佳祐。

 上野雄大。

 そして北澤信次。


 お世辞にも気の合う仲間達、などとは言えない俺達三人の間にも、ある一つの共通点がある。

 女という生き物に対する免疫が殆ど、と言っていい程に無いのだ。

 別に二人を庇う訳ではないが、少なくとも俺から見て上野と北澤の二人は、別に見れない顔をしているわけでは決してない。俺のルックスに関しては自分ではよく分からない。

 ならば何故彼女の一人もいないのか。

 答えは簡単、問題は中身なのだ。

 上野の場合、授業中にいきなり立ち上がって本を破り捨て、教室から出て行く、というようなその奇行の数々から、クラス内ではほとんど珍獣扱いされている。

 俺はまぁ、言わずもがなと言うか何と言うか、生来の無愛想な性格と不景気そうな表情、止めに相手を突き放すようなぶっきらぼうな言動で、クラスメート達から敬遠されている。


 そして北澤の場合、上野のようなとち狂った真似はしないが、彼はああ見えて実は極度の人見知りなのだ。


 親しい人間以外は例え同姓であっても、殆ど会話をしない。と言うか本人曰く出来ないらしい。

 そんな人間が、ある程度親しくなってきたとは言っても異性に自分から話しかけに行く、更には俺と北澤以外の人間を遊びに誘おうだなどと言い出したのだから、上野が驚くのも無理は無いのである。


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