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第12話(6月)〜眠気のワケは〜

 朝のホームルームが終れば、一時限目開始時間までの約十分間は生徒達の雑談時間となる。

 授業の合間にある休み時間というのは本来、次の時限の準備、予習時間なのだろうが、まともに予習している奴などごく限られている(と言うか恐らくいない)し、授業の準備など担当教諭が教室に入ってきてからでも十分間に合う。

 という訳で俺達いつもの三人組も他の生徒の例に漏れず、下らない雑談に華を咲かせていたのだが……。


「ふぁぁぁぁぁぁ……」

 噛み殺したものも含めれば、本日三十数回目となる欠伸が出た。

 少しアバウトなのは三十回目の時点で数えるのを止めたからである。

「うっわでっけー欠伸。のどち○こ丸見えだったぜ今?」

 俺の机の上に座っている上野が馬鹿みたいに笑う。

 ――んなでかい声でち〇こなんて言うなっての……周りに勘違いされんだろ。

 いつもの俺なら一発くらい頭をひっぱたいてやるのだろうが、そんな事を一瞬でどうでもよくさせる程に今は眠い。

「口くらい手で隠せよ佳祐……」

 呆れた表情を浮かべ、ため息混じりに咎める北澤。

「ぉー……悪ぃ……」

 返事をする事すらも億劫である。

 本当は机に突っ伏したいところなのだが、今机の上には上野が座っている。

野郎の尻の隣で眠りにつくのは傍から見てよろしくない。

 と言うか俺としてもよろしくない。

 かと言って上野を退かせる気力もない。

 どうしたものかと考えているうちに、体が椅子からずりずりとずり落ち、背もたれに首が引っかかって止まった。

 煤けた天井を見上げて小さなうめき声を漏らす様は、傍からは死体にでも見えるのではないだろうか。

「何だ何だどうした佳祐ぇ? あ、ひょっとしてあれか? 夜な夜な家族に隠れてAV観てるせいで毎日寝不足気味ってやつかぁ? んん?」

「午前中からよくそんな下品な冗談ぽんぽんと思いつくわね。ホント感心するわ。見習いたいとは思わないけど」

 何時の間にか上野の後ろに立っていた美空がため息混じりに毒を吐く。

 本当に神出鬼没だ。

「うぉっ! な、何盗み聞きしてんだよ委員長!?」

「盗み聞きしたんじゃないわ。あなたの声が馬鹿みたいに大きいから嫌でも聞こえてきただけよ」

「ば、馬鹿だとこのっ……何か用があんならさっさと言えよな!」

「あら、用が無くちゃ会話に入っちゃいけないの? まぁあったところであなたにわざわざ話す義務も無いわよね?」

「ぐ……ほんっっと可愛げがねぇ……」

「生憎あなたみたいな人に振り撒く程、愛想ってものを持ちあわせてないの。ごめんなさいね」

 顔は相変わらずの無表情。

 言葉の意に反して、その声色からも、申し訳なさの欠片も感じとる事は出来ない。

「……あの二人は放っとくとしてだ。何かあったのか佳祐?」

 口論する二人(性格には美空に噛みつく上野と、それを軽くあしらっている美空)を横目で見ながら、北澤が改めて問いかけてきた。

「ん? あぁ……最近ちょっと勉強ってのをしててよ。そのせいだ」

「勉強って……お前がか? 面白くもない冗談だなおい」

 苦笑する北澤。

 酷い言われようではあるが、自分が今まで、冗談だと思われても仕方ないような行動をとってきたという自覚があるので、腹は立たない。

「いや、冗談でもなんでもなくて本当にだな……」

「あー分かった分かった。要するに話したくない事情でもあるんだろ? 聞かんどいてやるよ」

 俺の言葉を遮った北澤はそう結論付け、前に向き直った。

 タイミングよく授業開始を告げるベルが鳴る。

 ――ま、信じてもらえるとは思ってなかったし、勘違いさせたままでいいか。

 一限目の担当教諭が教室のドアを開けて中に入ってきた。

 美月の号令で皆が立ち上がり、教師が教卓に出席簿を置いたところで礼をする。

 着席した瞬間に俺は机に突っ伏し、そのまま眠りの世界へと旅立っていった。


評価を見て、尋常じゃない点数の変動にびっくりしたら、評価基準が変わったそうで……安心したようながっかりしたような(汗)

酷評でも構いませんので、読んだままの感想を残していただけると、モチベーションもあがりますので、出来ればよろしくお願いしますw


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